書籍化で「私も」と被害が次々明るみに
猪谷さんは、「取材を始める当初は、話を伺うことができる被害者の方を探すのに難航するのではないかと心配でした。しかし蓋を開けると、次から次へと被害者へたどり着きました」と話す。
先日、猪谷さんがラジオ番組に出演した際も、リスナーから「私も被害を受けたことがあります」とのメッセージが複数寄せられた。
「出版後、『本を読みました。自分も同じような被害に遭っています』と連絡をくれた女性が何名かいました。
また、東京藝大のセクハラやパワハラが横行する新入生歓迎会について書いた記事に対して『よく書いてくれた』と卒業生から声が上がっていましたね。
作家からの反響も大きかったです。SNSでは特に若い女性から『自分が受けてきたことがここに書かれている』という声もいただきました。
きらびやかな美術業界の裏側で起きていることを、多くの方に知っていただきたいです」
猪谷さんがこれまで取材したのは、全員女性だ。徒弟制が強く残る美術業界では、抑圧に苦しむ男性もいるのではないかと感じているという。
「男性は男性で声をあげづらいのではないでしょうか。取材を受けることすらできず、自分が被害に遭っていることを他の人に話せないのではないかという懸念が残りました。
もし被害を受けている男性がいらっしゃったら、お話を聞かせていただければと思っています」