市場規模1000億円の昆虫食、コオロギ会社を直撃

現時点で保護者からのクレームは1件もなく、食物科の授業として生徒からの理解もきちんと得ていたと学校側はいう。
一方で今回コオロギ食を提供したグリラスはどのように考えているのだろうか。2019年5月に設立されたグリラスは食用コオロギの飼育や育種などを手掛けるベンチャー企業で、徳島大学大学院バイオイノベーション研究所・講師の渡邊崇人氏が代表取締役CEOを務める。食品業界の関係者は語る。

「昆虫食の中でもとりわけコオロギがクローズアップされるようになったのは間違いなくグリラスがあったからです。『無印良品』が同社のコオロギ粉末を使用して発売した『コオロギせんべい』がコオロギ食ブームの火付け役だったと言っても過言ではありません。2021年3月には環境省が主催する環境スタートアップ大賞のファイナリストに選出されるなど躍進を続けています」 

〈徳島・コオロギ給食騒動〉コオロギ加工会社に「菌は大丈夫?」「補助金をもらってる?」全部聞いた! 高校は「保護者からのクレームは1件もないですが、昆虫食を扱う予定はありません」_3
コオロギのエキス(グリラス提供)

今後は世界での市場規模が1000億円に達するとの試算もある昆虫食だが、今回の給食騒動以外にもたびたび議論を巻き起こしている。そこでコオロギ食の火付け役と言われるグリラスに取材を行った。

「今回の試食は弊社としてはコオロギ食を色々な方に知ってほしいという思いからでした。学校側はSDGsについてのいい教材だと考えていたのだと思います。日頃より『コオロギを食べて菌とか大丈夫なのか?』『虫なんて食わすな』『発がん性は?』といったお問い合わせや誹謗中傷もありますが、未知のコオロギ食に対してそう思われるのは不自然なことではないと捉えています」 (広報担当者)

世界人口が80億人を突破する現在、いずれ家畜を飼育する飼料も不足し、肉などからタンパク質を確保することが難しくなると言われている。「食の需給バランスを保てなくなる以上、近い将来、昆虫食にも頼らざるえなくなる」と担当者はいう。 

「牛乳の廃棄問題をはじめ、食品ロスの問題や代替肉など、食糧危機に関してできることはすべて取り組むべきだと考えています。その一環として弊社はコオロギ食に取り組んでいますが、コオロギ食がすべてだと考えているわけではありません」

だが、数ある昆虫の中でなぜコオロギだったのか。

「食肉に比べて食用コオロギはタンパク質の含有量が多く、その上、畜産と違って餌の量や水も少なくてすみます。しかもバッタなどとは違い、コオロギは雑食なんです。人間と似たような物を何でも食べるのでコストを抑えて飼育ができます。
そうはいっても弊社では飼育方法や餌に関してもこだわっていますから、現状、コストは高いです。当社では小麦粉ふすまをベースに食品残渣を餌に用いています」