「一杯目のビールはおいしい」は猫も一緒?
猫には「新しいもの好き」(ネオフィリア)という性質があります。これは肉食動物に共通する性質でもあるのですが、同じものを連続して食べると「おいしさ」が極端に減退してしまうのです。例えば、猫が二匹のネズミを連続して捕食したとすると、二匹目の味覚的な目新しさが極端に弱くなり、おいしく感じなくなります。人間でいうと、ビールの一杯目はおいしいのに、二杯目はそうでもなくなる……という感覚ですね。
では、いったいなぜ、猫は「新しいもの好き」になったのでしょうか?
人間と同じで、猫も同じものばかり食べると栄養が偏ります。ネズミを捕食するだけでは、猫の体に必要な栄養素を十分に補うことはできません。猫が適切な栄養バランスを保つには、さまざまな獲物を捕食する必要があるのです。
また、肉食動物である猫が獲物とするネズミなどの小型哺乳類は、猫よりも数が豊富だとはいえ、植物に比べると格段に少ないのです。もし猫が新しいもの好きではなかったら……「なんだろうこの生き物、見たことないぞ。うーん、食べるのはよそう」と、貴重な捕食の機会を逃すことになってしまいます。
つまり、野生の猫は「新しいもの好き」の性質のおかげで、特定の種類の獲物ばかりに執着せず、幅広い獲物を食べて栄養バランスをとりながら生き延びてきたのですね。