衣装デザインへの飽くなきこだわり
3つ目のエリアとなる「緑色の世界」では、衣装設定、デザイン、衣装の鑑賞が楽しめる。このエリアで特に注目なのは『I"s』の制服だ。
『I"s』の制服は、元々「普通の制服は描かないと決めていた」そうで、「『週刊少年ジャンプ』でミニスカートとニーソックスを制服にしたのはたぶんはじめて」だと明かしている。
そんな制服をリアルな衣装で見られる機会なので、ぜひ実物を見て欲しい。
また、「緑色の世界」では人気コスプレイヤー・えなこの写真集のために描き起こされたデザインと実際の衣装も展示されている。デザイン画と実際の衣装を見比べられる展示となっているので、制作の工程を垣間見ることができて、桂先生の細部へのこだわりを感じられる。
他にもアニメやゲームのキャラクターデザインのイラストや、乃木坂46のメンバーの似顔絵などが展示されている「白色の世界」、エリアが丸ごと『TIGER & BUNNY』の世界になっている「黄緑とピンク色の世界」もある。
「黄緑とピンク色の世界」では、Netflixで配信中の『TIGER & BUNNY 2』のキャラクターデザイン、等身大のワイルドタイガーとバーナビー・ブルックス Jr.の新ヒーロースーツ「Style 3」も展示されている。会場で最も広いスペースが割かれているので、桂先生を『TIGER & BUNNY』から知ったファンも楽しめる内容となっているはずだ。
さらに、展覧会の出口には物販コーナーを併設。桂先生の原作イラストを使用したグッズが多数販売されている。特に注目なのが、キャラファイングラフ(複製画)やキャラファインアクリル、キャラファインボード。いずれも魅力的だった。
受注生産のグッズの受付もあり、中でも『電影少女』と『I"s』のスケートボードデッキはずっと見つめてしまうほどの存在感を放っていた。
どうしてこんなに可愛いキャラクターを生み出せるのか!?
展示会に先がけて26日(火)に行われたトークショーでは、桂先生と人気コスプレイヤーの伊織もえ、よきゅーんが登壇。一問一答形式で30分ほどのトークショーが開催された。
桂先生はトークショーの中で、キャラクターデザインの意外な創作秘話を公開して会場を驚かせた。
「(『I"s』は)SFのない漫画にしてくれと言われたので、王道の恋愛を書こうと思った。そこで、自分が想像できうる万人にウケる女子を描いた。でも、 (ヒロインの葦月伊織は)嫌い。っていうか、人として面白くない」
「かの“ドクターマシリト(初代担当編集者の鳥嶋和彦)"に『ドラゴンボール』の孫悟空は、透明で何も染まってないのでウケる、と言われた。伊織もこの理論と一緒。特色ある色を持たないようにしようと思った。誰が見ても可愛いなぁ、を集中して描いた」
「伊織は計算されて、数学的にできている。とにかく誰もがいいと思うマドンナにしたかった。ただ案の定、そうなっちゃった。どんなキャラクターを持ってきても伊織に勝てない。本当に伊織は人気がありますね」
など連載当時の話を振り返りつつ、キャラクターデザインの秘密を語っている。
「40th Anniversary 桂正和〜キャラクターデザインの世界展〜」はファンだけでなく、桂先生を知らなかった人も大いに楽しめる内容となっているので、期間内にぜひ足を運んでもらいたい。また、桂先生の画業40周年突破記念のスペシャルサイトも公開されているので併せてチェックすることをオススメしたい。
取材・文・撮影/砂流恵介 ©桂正和/集英社