高さ600mの電波塔のてっぺんに取り残された!

『FALL/フォール』(2022)Fall 上映時間:1時間46分/アメリカ

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© 2022 FALL MOVIE PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

最後に、まさしく“ワンシチュエーション・サスペンス”の見本のような、現在公開中の『FALL/フォール』(2022)を紹介しよう。

フリークライミング中に、目の前で夫が落下死してしまってから、悲しみのあまり酒におぼれて1年を無為に過ごしていたベッキー(グレイス・フルトン)。彼女の元に、“デンジャーD”のハンドルネームで映像配信をし、フォロワー6万人を持つ親友のハンター(ヴァージニア・ガードナー)が訪ねてくる。

ハンターは、今は使われていない地上600メートルのモンスター級テレビ塔にふたりでクライミングし、ベッキーから事故以来の恐怖心を取り除き、立ち直らせようと計画していた。老朽化して足場が不安定な梯子を上り続けて、ふたりは何とか頂上に到達することに成功したものの、頂上に至る唯一の移動手段だった梯子が崩れ落ちてしまい、下に降りることができなくなってしまう!

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梯子崩落の際に、持っていた水のボトルの入ったリュックを10数メートル下のパラボラのところへ落としてしまい、水分補給もできない。しかもスマホは持っていたものの、高度が高すぎて電波は届かない! この絶望的なシチュエーションの中で、ふたりは下界に状況を伝えて助けを呼ぶことができるのか?

限られた舞台設定と限られた登場人物で、わずか300万ドル以下の製作費で作られた本作。人里離れた山頂に20メートルの高さのセットを組んだ撮影ゆえに、リアリティがあり、低予算を感じさせない。ちなみに高所恐怖症の俳優はオーディション段階で脱落したという。

ネタバレになるので詳細は見てのお楽しみだが、本作にも、後半になってあっと驚く予想外の展開が待ち受けている。それは“ワンシチュエーション”を覆す類の禁じ手ではないものの、見る者を思わず唸らせる脚本のうまさとして心に残る。この冬必見の、手に汗握るサバイバル・サスペンスだ!


文/谷川建司