『地獄の黙示録』(1979)で翻訳家デビューを果たせた私にとって、フランシスは生涯の恩人のひとりです。『ゴッドファーザー』シリーズ(1972、1974、1990)など名作はたくさんありますが、個人的にすごく好きなのは『カンバセーション 盗聴』(1973)。彼は常にテクノロジーに関する先端知識を持っている人で、盗聴をテーマにしたこの作品も、当時はまだ普及していなかったハイテク技術を先取り。それが新鮮であり、大きな驚きでした。小品ではありますが、主演のジーン・ハックマンの演技もよくてね。フランシス本人も「すごく好きな作品」だと言っています。
ここ十数年はパッタリ映画製作をやめてワイン作りに力を入れていましたけど、やっと腰を上げてくれました。現在、アメリカのジョージア州で『Megalopolis』という大作の撮影に入っています。親しくさせていただいてる奥さまのエレノアさんからも、彼が「すごく張り切っている」というメールが来ました。アダム・ドライヴァーやフォレスト・ウィテカー、ローレンス・フィッシュバーンといったキャストを見ても、彼好みの顔ぶれよね。今から完成が楽しみです。

戸田奈津子の翻訳デビュー作『地獄の黙示録』からのお付き合い。十数年映画作りをやめていた巨匠・コッポラ監督の珠玉の作品とは
字幕翻訳の第一人者・戸田奈津子さんは、学生時代から熱心に劇場通いをしてきた生粋の映画好き。彼女が愛してきた監督やスターの見るべき1本を、長場雄さんの作品付きで紹介する。
長場雄が描く戸田奈津子が愛した映画人 vol.13 フランシス・フォード・コッポラ
十数年間ワイン作りに励んでいた
『カンバセーション 盗聴』(1973) The conversation 上映時間:1時間53分/アメリカ
サンフランシスコに住むハリー・コール(ジーン・ハックマン)は、盗聴のプロ。大企業の取締役から依頼を受け、密会する若い男女の会話を盗聴することに。他愛のない世間話に聞こえたが、録音には殺人事件をほのめかす会話が記録されていた……。カンヌ国際映画祭のグランプリを受賞し、アカデミー賞では作品賞と脚本賞、録音賞の3部門にノミネートされた。
フランシス・フォード・コッポラ
1939年4月7日生まれ、アメリカ・ミシガン州デトロイト出身。妻は映画監督のエレノア・コッポラ。娘のソフィア・コッポラや息子のロマン・コッポラも映画監督として活動している。カリフォルニア大学ロサンゼルス校在学中から映画の演出を手がけ、ロジャー・コーマンのプロダクションで低予算映画の監督としてキャリアをスタートする。『パットン大戦車軍団』(1970)の脚本で注目され、1979年の『地獄の黙示録』はカンヌ国際映画祭グランプリを受賞。1979年の『ゴットファーザー』が世界的ヒットを記録した。
語り/戸田奈津子 アートワーク/長場雄 文/松山梢
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