ジョディ・フォスターの出演作で一番に思い浮かぶのは、『羊たちの沈黙』(1991)。アンソニー・ホプキンスが演じたレクター博士はもちろん素晴らしかったけれど、FBI実習生クラリス役の彼女が、ガッチリと受け止めていましたよね。「怖い」映画として、見逃せない傑作です。
子役から活躍しているので、演技力はもちろんある人だけど、役のために徹底的に準備をするし、勉強する人よね。プロデュースも務めた『ネル』(1994)では、外の世界を知らずに山奥の小屋で育った、独自の言語を用いる主人公のネルを演じました。この「ネル語」は、彼女が考えたの。言語体系を自分で作っちゃったこともすごいし、それを字幕で「日本語化」するのに苦労しました。
何度も来日時にお会いして通訳も担当しましたが、イエール大学出身のインテリなので、とにかく頭がいい。子供の頃から仕事をしているから、インタビューにも慣れているのね。おしゃべりなわけではないけれど、要点をビシッと的確についてくる感じ。研ぎ澄まされたナイフのようで独特の緊張感があり、私も少し怖かったけれど、インタビュアーはもっと怖かったと思います(笑)。
あまりにもインテリのイメージが先行してしまって、鋭い女の役が多いけれど、演技の才能は抜群にあるし、ハリウッドで独特の立ち位置を持つ女優さんです。
子供ができた頃からかな。本当に柔らかい雰囲気になって、カミソリのように鋭かった若い頃とは印象がガラリと変わりました。2人の子供と来日したときなんか、ソファの上でコロコロ転げまわって遊んだりしていました。別人のようでしたね。

「カミソリのように鋭かった」…戸田奈津子が見たイェール大学出身のインテリ俳優、ジョディ・フォスターの素顔
字幕翻訳の第一人者・戸田奈津子さんは、学生時代から熱心に劇場通いをしてきた生粋の映画好き。彼女が愛してきたスターの見るべき1本を、長場雄さんの作品付きで紹介する
長場雄が描く戸田奈津子が愛した映画人 vol.12 ジョディ・フォスター
要点をバシッとついてくるから、インタビュアーが恐怖していた
『羊たちの沈黙』(1991)The Silence of the Lambs 上映時間:1時間58分/アメリカ
アメリカ各地で女性が殺害され、皮膚を剥がされる猟奇的な事件が発生。捜査に行き詰まったFBIは、収監中の元精神科医の殺人鬼ハンニバル・レクター(アンソニー・ホプキンス)に助言を求めることに。面会にやってきたFBIアアカデミーの実習生クラリス・スターリング(ジョディ・フォスター)に興味を持ったレクターは、クラリスが自分の過去を語って聞かせることと引き換えに、事件への助言を約束する。ジョディはアカデミー主演女優賞を受賞した。
ジョディ・フォスター
1962年11月19日生まれ、アメリカ・カリフォルニア州出身。2歳より子役として活躍。『タクシードライバー』(1976)『ホテル・ニューハンプシャー』(1984)『告発の行方』(1989)『羊たちの沈黙』(1991)『ネル』(1994)などに出演。『リトルマン・テイト』(1991)で映画初監督を務めるなど、監督・プロデューサーとしても活動している。
語り/戸田奈津子 アートワーク/長場雄 文/松山梢
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