トラウマを告白したブルック・シールズやアン・ハサウェイ
性的暴行被害者の支援をおこなってきたTime's Upの閉鎖は非常に残念だが、これによって再び女性たちが声を奪われるわけではない。サンダンス映画祭で上映され、話題になったドキュメンタリー映画『Pretty Baby: Brooke Shields』(2023)の中で、ブルック・シールズは、ハリウッドの大物から受けたレイプについて生々しく語っている。加害者の名指しこそしていないが、その出来事は彼女のトラウマとなっている。
12歳で『プリティ・ベビー』(1978)に出演し、ヌードを披露したことで性の対象とされて以来、彼女は心と体を切り離す術を学んでいたと語っていたのがとても切ない。
アン・ハサウェイも最新作『Eileen』(2023)が上映されたサンダンス映画祭の取材で、16歳のときにリポーターから受けた、あからさまに性的な質問について言及している。「自分が何者かを判断しかねているティーンのときに、鳥肌が立つような質問をされて、本当に嫌だった。16歳のときの私の答えがこの映画よ」と。
#MeTooがもたらしたのは、性的暴行やハラスメントに立ち向かう勇気を被害者に与えること。と同時に、それらを生む社会構造や権力の濫用に歯止めをかけようとする人々を後押しすること。
それは変化を求め、行動を促すことであり、一朝一夕で結果が出ないのは当然のこと。
たとえ、3歩進んで2歩下がっても、確実に1歩進んでいるのだ。このゆっくりとした歩みにより、社会はいい方に変わっていくと信じたい。
文/山縣みどり
『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』(2022)She Said 上映時間:2時間9分/アメリカ
ジョディ(ゾーイ・カザン)とミーガン(キャリー・マリガン)は共にアメリカ大手新聞社のひとつ、ニューヨーク・タイムズ紙の調査報道記者。大統領選挙から職場環境まで数多くの問題を調査報道し実績を残してきた。そんな中、ハリウッドから大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの数十年に及ぶ権力を行使した性的暴行の噂を聞き、ジョディは調査へと乗り出す。ジョディは産休中で産後うつ気味のミーガンと共に、様々な嫌がらせや生命を脅かされる目にあいながらも懸命に調査を続けるが……。果たして、自身の未来と引き換えに、秘密保持契約と多額の示談金で口を封じられた女性たちを説得し、記事で告発することはできるのか?
公開中
配給:東宝東和
公式サイト:https://shesaid-sononawoabake.jp
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