発達障害・グレーゾーンで悩む人が、
業務や人間関係を円滑化する方法

——発達障害の特性によって業務を思うように遂行できない人が、会社で周囲に理解と合理的配慮を求めることは可能なのでしょうか?

林田 少なくとも障害者雇用の場合は、企業側の義務になっているので可能です。でも最初から「苦手なことがあるから配慮してよ」と、周囲に理解を求めることから始めると、周りからの協力が得にくいと思います。
大前提としては、自分の苦手なことを把握して、その対策を自分で見つけていく必要があると考えています。

もし電話対応が苦手なら、電話対応のどこが苦手なのかを自分で考えます。
そして「(過集中傾向のある人が)作業に集中している最中に突然電話が鳴り、いったん作業を中断して電話対応するのが苦手で、日中ずっとそわそわしてしまう。予定された電話や対人コミュニケーションなら問題ない」とわかったら、電話対応を伴う業務の代わりに、ある程度まとまった時間に一人で作業に集中できる業務を担当できないか相談するなど、合理的配慮を求めるとよいのではないでしょうか。

発達障害をもつ方が自立的に働くためのヒントは“「苦手」への対策を自分で考える”こと_5
取締役 林田絵美さん。自身も発達障害の当事者だ
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——発達障害であることを同僚や上司に告げたほうがよいのでしょうか。

林田 発達障害について周囲に打ち明けるかどうかは、本人の考え方や周囲の状況によっても異なりますが「一人に言ったから、残りの全員に言わないといけない」とも限らないです。

「人事担当者だけに知らせておく」「人事担当者と直属の上司だけに知ってもらう」「信頼している同僚にも話す」など、さまざまなパターンが考えられますね。

長谷川 その方がその会社でどう働いていきたいかによっても、判断が変わってくると思います。体調を崩さず長く安定して働きたいなら、同僚にも伝えておいたほうが、体調不良時の休暇取得につついて相談しやすかったり、仕事を調整してもらうなどの配慮を受けやすくなったりします。

——発達障害をもつ方には、その人ならではの強みもあると思います。お二人は「強み」についてどのようにお考えですか。またその強みを、どのように活かしていけばよいでしょうか。

林田 私も発達障害の当事者なのですが、発達障害は「何かが極端であること」が多いです。例えば極端な白黒思考の傾向がある人は、「曖昧さを許容することが苦手」ともいえれば「常に物事をはっきりと考えることが得意」ともいえます。

つまりその「極端」な部分は、自分自身にとって「困難」になることもあれば「強み」になることもあるということです。

とはいえ、いきなり「強み」を見つけにいくのもなかなか難しいことかもしれません。まずは働き方・職種・企業文化など様々な切り口で、自分の特性との相性の良し悪しを分析してみることで、最終的に「強み」の活かし方を見つけられるのではないかと思います。

長谷川 発達障害の方の中には、秀でていることがあってもそれを活かせない環境にいるために、ネガティブな状態になってしまった方がいると感じます。合わない環境で、毎日のように「なんでそんなこともできないの!」と叱責されてばかりでは、萎縮して当然ですよね。

しかし強みを活かせる場所に巡り会えたら、大きく変化できると思います。まずは自分を客観視して、自分の強みを活かせる環境、企業を探求してみてはどうでしょうか。

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取材・文/綾瀬ゆうこ 撮影/塩川雄也