コロナの影響でいじめは減ったものの…
日本のいじめの現状を見ていきましょう。いじめの認知件数は毎年過去最多と報道されていますが、本当なのでしょうか。
2020(令和2)年度の文部科学省による調査(「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導 上の諸課題に関する調査」)では、2020年の小・中・高等学校および特別支援学校におけるいじめの認知件数(学校側が把握できているもの)は、51万7163件でした。前年の2019(令和元)年の認知件数61万2496件と比べると、かなり減少していますが、新型コロナウイルス感染症の影響で、物理的にも人との距離が離れたことが大きな理由として考えられています。
実は、いじめの定義が法律的に定められた2013(平成25)年から、2019年まで毎年増加していました。2013年の18万5803件と比較すると、ここ数年で認知件数がかなり増えていることがわかるかと思います。
■学校側が積極的にいじめの事実を認めはじめている
続けて、いじめの状況もあわせて確認してみましょう。調査の対象になった全学校の中でいじめを認知した学校の割合は「78.9%」でした。ほとんどの学校でいじめが認知されていると言ってもいいかもしれません。
しかし、これらの数値だけを見て、「いじめが増えている!」「学校がいじめを放置しているから増えているんだ!」と考えるのは、少し早い判断です。
もちろん、突然いじめが急増した可能性もあります。ただ、学校におけるいじめが社会問題として強く認識されるようになり、学校側もいじめを隠すのではなく、積極的にいじめを認知して、対応するようになったために急増していることが考えられるわけです。
そのため、単純に学校の治安が悪化しているとは言い難く、むしろここで問題となるのは、「いじめを認知しなかった学校では、本当にいじめがなかったのか」という点です。
本当にいじめが根絶されているのか、それともいじめが放置されているのか。文部科学省も同じ懸念を有しているのか、次の通知を発しています。
いじめの認知件数がゼロであった場合は、当該事実を児童生徒や保護者向けに公表し、検証を仰ぐことで、認知漏れがないか確認すること。
―平成30年3月26日 いじめ防止対策の推進に関する調査結果に基づく勧告を踏まえた対応について(通知)
つまり、本当にいじめがないのか、保護者等からも聞けと指示しているのです。