何もない、何もわからないのが楽しい

「テレビで忙しいの漫才のネタまで作って偉い? 逆やん」村本大輔が語るスタンダップコメディと日本のお笑いの決定的な違い_4
すべての画像を見る

――日本でならウケるネタでも、海外だと面白さが伝わらないネタもありますよね。日本に住んでいる人なら誰もがわかるような単語だったり、前提になっているものが、そもそも向こうでは通じないのでは。

せやねん、せやねん。

それはアメリカのコメディアンでもそうで、ネタの中でアメリカの俳優の名前が出ても、俺にはわからなかったりする。

だけど俺がこれからやっていきたいのは、そういった固有名詞なんかを徐々に無くしていって、もっと本質的で普遍的なネタを作ること。

俺が世界で一番尊敬しているコメディアンのジョージ・カーリンにはそれが出来たから、彼のネタは彼が亡くなった後も残ってる。俺の場合はまず、言語の壁もあるから難しいけどねー……。

でもふと考えたときにさ、俺らみんなもともとは、胎児やったやん。この世に生まれるときに胎児が産道を通るのと、どっちが難しいんだろうって思うわけ。自分の手も足もわかってないやつが頑張って産道から出てきたのよ。

そう考えたらさ、なんかこう……俺には英語を教えてくれる先生もいるし、最高じゃない? 

楽しい。楽しいよ。何もないのが。何もわからないことが。


文/金愛香 撮影/U-YA

♯0はこちら、♯3はこちら
つづきの♯2はこちら

「テレビから消えた芸人」ウーマン村本を追いかけた映画『アイアム ア コメディアン』が突きつける日本人の”生きづらさ”の正体