「テレビから消えた芸人」村本大輔
笑いやユーモアは、人間が生きていくうえで必要不可欠なものの一つだろう。笑うと、「愛情ホルモン」とも呼ばれるオキシトシンや、幸福感をもたらすドーパミンといった脳内物質が分泌され、心身共に大きな健康効果が得られるという。
また、米スタンフォード大学経営大学院では、ユーモアを信頼構築に役立てとようとする講義が行われるなど、笑いはビジネスの分野にも活用されている。
米作家のマーク・トウェインは「人類が持つ非常に効果的な武器、それは笑いだ」と言ったそうだが、戦場からユーモアによって連帯を広げようとするウクライナ市民の取り組みは、多くの海外メディアに好意的に取り上げられた。
2022年10月におこなわれた東京国際映画祭でも、笑いによって日本のテレビ界に立ち向うひとりの芸人のドキュメンタリーが話題になった。ウーマンラッシュアワーの村本大輔氏を追った『アイ アム ア コメディアン』だ。
難航した制作
2013年、「THE MANZAI」(フジテレビ)での優勝を機にブレイクした村本さんは、相方の中川パラダイスさんと共にテレビで活躍していた。ところが2018年頃から露出が減少し、やがて「テレビから消えた芸人」と称されるようになる。
2017年に200本以上あったテレビ出演は、2020年には1本と激減。理由は自身がネタを作る漫才に政治の話題を持ち込んだからだ。
在日コリアン差別、沖縄県・辺野古の基地移設、原発と、口に出せばテレビでなくても一瞬、場が凍りつきそうなネタをゴールデンタイムに披露。その結果、SNS上で批判を浴び、「炎上芸人」「反日左翼」のレッテルを貼られた。
テレビのお笑い番組に不自由さを感じ、自ら離れていった村本さんは、新たな活躍の場を求めて渡米する。