村本大輔インタビュー♯0♯1♯2を読む

未「テレビから消えた芸人」ウーマン村本を追いかけた映画『アイアム ア コメディアン』が突きつける日本人の”生きづらさ”の正体

『THE MANZAI』で感じた、ピエロになった気分

「一番素直なコメディアンでありたい」村本大輔はなぜ人の傷に触れ、それをコメディに昇華させようとするのか?_1
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――村本さんも影響を受けられたというコメディアン、デイヴ・シャペルについて少し伺います。デイヴはデビュー後、コメディアンとして数々の番組や映画に出演していました。人気絶頂のなか五千万ドルの出演料を放棄し、自身の番組『Chapelle’s Show』を降板した後、南アフリカへ移住。メディアの世界から突然姿を消した彼について、あらゆる噂がアメリカ中を飛び回りました。

その数年後、彼は地元の大学で講演会をしたり、スタンダップコメディアンとして多くの劇場に姿を現します。デビュー後のデイヴと、THE MANZAI優勝後の村本さんの経歴が、多々シンクロしているように感じます。彼は何故、人気絶頂の中メディアの世界から姿を消したと思いますか?

真実はデイヴ本人にしか分からないけど……。彼が白人をディスるネタをやった時、当の白人が一番笑っていたのを見て「俺は一体誰のためにコメディアンをしているんだろう…」みたいな複雑な気持ちなったという話を聞いたことがある。

俺の場合それで言うと、『THE MANZAI』のネタで「一番の問題は国民の無関心さ。ようこそ日本へ!」「お前らのことだ!」ってお客さんを指さしたときに、目の前のお客さんが大爆笑していたのを見て、すごく複雑な気持ちになった。

いや、確かにそこで笑わせたいんだけれど、笑ってるのがすごく気になってきて。なんで笑ってるんだろう……、みたいな。

コメディアンとしての自分、あるいはアクティビストとしての自分、わからないけれど、そのどこかの隙間にいる自分の気持ちがなんかこう……、ピエロになった気分というか、とても空しい気持ちになった。

ここにいると自分を見失いそうな気がして、だからもうここにはいたくないと思った。

あとは、テレビに出ると他の共演者と繋がって協力して一緒に仕事をしていくわけやん。目まぐるしく仕事をこなしていく中でふと、「俺は俺のコメディをもって何がしたいんだろう。誰を笑わせたいんだろう」って思ったりして。

スタンダップコメディはマイク一本で、誰ともつるまずに常に自分一人で表現し続けられるから、そのときに自分と自由を取り戻した気持ちになるね。

もしかするとデイヴも……。自由な地に戻りたくなったんじゃない? わからんけど。