角餅なのに焼かないのは、
ただシンプルに食べたいだけ
名古屋のお雑煮は角餅だが、焼かずに煮るのが一般的な調理方法だ。これには白い餅を城と見立てて、城を焼くのは縁起が悪いので餅は焼かないという説があるが、どうなのだろうか?
「確かにそういった説はありますね。でもおそらく、ただシンプルにお雑煮を食べたいだけだと思います。餅を焼くと香ばしくなり、すまし汁の味の邪魔になりますし。煮たほうが調理も効率的というのがあると思いますよ」(大竹さん)
また、名古屋のお雑煮に使われている具材の野菜に「餅菜」という伝統野菜がある。正月菜とも呼ばれ、古くから尾張地方で栽培されてきた小松菜の仲間。小松菜よりも色が淡くやわらかくて甘みがあるのが特徴だ。
「餅菜は肉厚でおいしいですね。尾張地方にはたくさんの伝統野菜があるので、伝承され、今でも使われているんだと思います」(大竹さん)
豆味噌が欠かせない名古屋エリアなのに、正月のハレの日のお雑煮はあっさり味を好むという。つくづくお雑煮は地域の食文化が凝縮された食べ物であると実感した。
取材/百田なつき