全国レベルの女子との練習で得たもの
桐生市立商の女子は強豪である。いくらフィジカルの強さなど男女間で根本的な差があるとはいえ、女子選手の洗練されたプレーに圧倒される。徹底的に走らされたりと、当然のように練習も厳しい。
加えて、「必要以上にSNSを使わないように」「ジャンクフードや菓子類を控えるように」といった規律も彼らの心身を窮屈にした。
「なんか、イメージと違う」
そう言ってひとりやめ、ふたりやめ……夏を迎える頃には、5人いた男子部員は亀山ひとりとなった。
亀山も同士たちを引きとめようとしたが、彼らはコートを去ってしまった。本気だったのは、自らの意志で桐生市立商に入学した亀山だけだったのだ。
女子バスケットボール部でキャプテンの北村凜花は、そんな後輩の姿勢を見習う。
「陸斗はすごいバスケが好きなんだろうなって思いますよね。女子のなかに男子がひとりだけ練習に参加するって、勇気がいるじゃないですか。好きじゃなかったら絶対に残ってないし、根性があるなって思います」
バスケットボールはコンタクトスポーツの側面もあるため、同じコートに立てば体をぶつけ合いながらボールを奪うことだってある。男子であり、後輩でもある亀山は「どこまで当たっていいのか?」と、遠慮がちなプレーが多かった。
だが、北村をはじめとする先輩たちからは、「もっとコンタクトしていいよ」「そんな当たりじゃ、ちゃんと守れないでしょ」と、逆に叱咤を受けた。
今年のウインターカップにも出場する彼女たちが求めているのは、全国レベルだ。強豪チームにとって、コートに立てば男女など関係ないのである。北村が言う。
「自分たちは全国ベスト8を目指して練習しているから、そこで遠慮とかされると高いレベルでできなくなるんで。だから、ちゃんとやってほしいし、陸斗もそこをだんだんわかってくれているんで、今はチームの一員って感じで他のみんなも思っています」
この環境が亀山を積極的にさせた。そうなると課題がどんどん浮き彫りとなってくる。まず、体力がない。ディフェンスからオフェンスに切り替わる際のスピードも鈍く、シュートの成功確率もまだまだ低い。
普段は女子とともに練習している亀山がそのことをはっきり認識できるようになったのは、夏休み期間中から近隣にある桐生清桜と合同で練習できるようになってからだった。
週に1、2回、男子と同じコートに立つことで今の力量を明確に測れるのだと、亀山は言う。
「女子のなかでも課題を感じているなか、清桜高校で男子と一緒に練習させてもらえるようになったことで、前よりもガツガツできるようになりました。積極的にいかないと当たり負けするとか、体力的にも技術的にももっと強さが必要だと思っています」