柳楽優弥が挑んだ狂気を孕んだ主人公
第1話から猟奇的かつ、まがまがしい閉塞感のある村社会のありさまが、容赦なく展開する本作。
「ディズニー・コンテンツ・ショーケース2022」で世界同時公開された最新予告編では、「顔を喰われた」と証言するキャラクターを演じる高杉真宙も登場。会場で映像が流れた際には、各国の記者からどよめきも。世界レベルでヤバいドラマなのです。
ロードショーでは、主演の柳楽優弥と片山慎三監督のツーショットインタビューを敢行しました。
──よき父親、よき警察官であろうとする一方で、家族を守るために、次第に内なる暴力性や別の側面を露呈させていく大悟を演じる柳楽さんの、どこか一本線がキレたような、狂気を感じさせる役作りに圧倒されます。
片山慎三(以下、片山) 実際に現場で見ていて、大悟を演じる柳楽さんの演技は狂気じみていると思いました。たとえばアクションシーンで表情が、ちょっと笑ってるように見えたりするんですよね。そういうところが今回、柳楽さんに大悟を演じてもらって、よかったなと思う点のひとつです。
大悟という人間の持つパーソナリティの部分が、漫画で読む以上に、柳楽さんが演じることでさらに深くなったし、その奥にまだ何かがあるんじゃないかと想像させるような広がりを持てたのではないかと。
柳楽優弥(以下、柳楽) 実は以前、僕のそういうキレたというか、狂気の演技を見てみたいと言われたことがあって。ただ、こういうキレた役というのは、やっぱり演じるのも大変で(笑)。でも、実際に「こういう演技を見たかった」と言ってくれる人がいると、がんばろう!と思えました。
ただ、その塩梅や加減は、絶妙に監督が演出してくださっていたと思います。わからないときは素直に質問して、意見をやりとりしながら監督のことを信じて演じました。
役作りのとっかかりとしては、やっぱり自分と共通しているのは家族がいるという点。なので、そこを軸にしました。あと僕はずっと武道をやっているのですが、警察官という職業である大悟のような人物を演じる際に、その立ち居振る舞いとか動き、アクションなどには、ベースにある武道の経験が活きたのではないかと思っています。
──片山監督は2019年の『岬の兄妹』で注目を集めて、短期間で世界同時配信の大規模な作品を手がけるまでにステップアップ。一方の柳楽さんは、『誰も知らない』(2004)で第57回カンヌ国際映画祭にて史上最年少および日本人として初めての最優秀主演男優賞をし、いきなり世界の注目を集めました。キャリアを積んだ上で、今またNetflix映画『浅草キッド』(2021)、そして『ガンニバル』と世界同時配信作品への出演が続いています。それぞれ、どのように感じていますか?
片山 僕の場合、そこまで監督作品の本数が多くはないのですが、割とバジェットの大きい企画に関わることができているのは、すごくありがたいし、うれしいです。いかにしてそのチャンスに応えるかというのはプレッシャーもありますが、すごく楽しんでやっています。
みなさんがいる前で言うのはあれですけど、まあダメならダメで、ここは博打で思いっきりやろうと振り切っていきました(笑)。もちろん、多少は遠慮というか、僕もグロテスクなものが好きなわけではないので、そこは自分の感覚を信じてやらせてもらったという感じですね。なので、本当にひとりでも多くの方に『ガンニバル』を見ていただきたいです。よろしくお願いします(笑)。
柳楽 いい景色を見た経験というのは印象に残っているし、人はなかなか忘れないんですよね。「またあの雰囲気を感じたい」って、常に思うんですよ。だから、カンヌ国際映画祭はすごいステージだったということを、年々自覚しているし、また行きたいと思ってやっている。この感覚、思いはブレないんですよね。消えないんですよ。
だから今日、こうやってシンガポールに来れる機会を与えられたことで、「またこんなすごいところに来たい」という気持ちも湧くし、一方で、アジアのメンバーを見て、やっぱり韓国のチームはかっこいいなって思う。僕は本気で“スーパー・ムービースター”になりたいので(笑)、この気持ちが大事だなと思っています。