風俗、ホスト、中絶、個人売春…

今回紹介するのは、小杉綾乃(仮名、25歳)が起こした事件だ。

綾乃は5人きょうだいの次女として生まれた。父親はほとんど家に帰ってこず、兄や姉が親代わりだった。きょうだいの中では争いが絶えず、綾乃はしばしば叩かれたり、「死ね」と罵倒されたりする日々だった。「虐待」のような境遇にあったのだろう。

短大に進学した後、綾乃は友人の誘いで風俗の仕事をはじめ、家にほとんど帰らなくなった。親やきょうだいと顔を合わせているのが苦痛で、夜の街ですごしていた方がましだと思うようになったのだ。短大も除籍になった。

綾乃は月に50万円ほど稼いでいたが、そのほぼすべてをホストクラブに注ぎ込んだ。よくホスト通いをする夜の街の女性を「浅はかだ」と批判する声がある。ごもっともな意見だが、その背後には彼女たちの生い立ちが関係している。

家庭環境が劣悪で、愛着形成がうまくいかなかった場合、人は大きくなってからゆがんだ形で他者にそれを求めるようになる。カサカサに乾ききった心を、家族以外の誰かに潤してもらいたいと渇望するのだ。

人によっては不特定多数の異性との性行為でそれを求めたり、売春によって求めたりする。中にはホストクラブへ通いつめ、多額の金を払うことで、「かわいい」とおだててもらい、満たされようとする者もいる。言うまでもなく、それは刹那の幻想でしかないのだが……。

綾乃は風俗で稼いだ金をひたすら投入し、入れあげたホストと同棲をはじめた。だが、妊娠・中絶を機に別れることになり、彼女は無一文でアパートを追い出されたため、個人売春をしながら漫画喫茶で生活する。

なぜ、漫画喫茶なのか。