マドリードの屈強な精神は食文化にも
最後に現在、最も多くのスペイン代表選手を輩出しているのは、首都マドリードのあるマドリード州出身者だろう。もともと、カスティーリャ王国があった地域全体を含め、スペイン中央部のほとんどが入る。いわゆる「スペインの実体」と言ってもいい。
中心であることの自負心か、鼻持ちならないタイプが多いと言われるが、それが自尊心の高さにもつながる。誇り高く戦えるタフな選手が多いのが特徴だ。アルバロ・モラタ、パブロ・サラビア、マルコス・ジョレンテ、ダニエル・カルバハルは、いずれも欧州王者レアル・マドリードの下部組織で「王者の精神」を叩き込まれている。
「一人の男になる」という育成理念は勇敢な戦士を作り上げる。環境を変えても弱音を吐かず、勝利のために集中してプレーできる。
剛直で屈強で、傲慢とも言える勝利の精神は、なんと食文化にも受け継がれる。
その代表はコシードだ。コシードはカスティーリャ地方郷土料理で、各家庭で独自の味がある。みそ汁や肉じゃがの存在に近い「おふくろの味」か。
腸詰肉、骨付き豚肉、鶏手羽元をじゃがいも、ニンジン、キャベツ、そしてヒヨコ豆と煮込んだ料理。フランスのポトフに近いが、特色は二段階の食べ方にある。まずは前菜としてスープにゆでたショートパスを入れ、舌鼓を打つ。次にメインで肉や野菜を堪能。栄養豊富で、パンチのある料理だ。
スペインでは多国籍料理を味わえる贅沢さがある。
ちなみに筆者のお気に入りは、ポルトガルの北にあるガリシア地方の「ガリシア風タコ」。港町で食するタコ料理は想像を絶する。
タコはもちろんうまいのだが、そのうまみを吸った添え物のジャガイモだけで満足。ガリシアの白ブドウを使ったアルバリーニョを”お供”にできたら、もはや無敵か。
スペインはピッチでも、手ごわい敵になりそうだ。
文/小宮良之