「補欠ゼロ」を実現しつつある高校サッカー

高校野球の大きな問題のひとつは、「一度も公式戦出場の機会がないまま卒業する球児が大勢いること」だ。部員が50人以上、いや100人前後いる高校も珍しくない。そのような高校では「試合に出られないのが当たり前」という現実がある。そして高校球界は、その事実をほとんど問題視していない。

甲子園出場が唯一無二の価値とする考えに支配され、部内のレギュラー争いに敗れた者に野球の試合をする資格はない、と言わんばかりの優勝劣敗思想に覆われている。

高校野球は教育の一環、部員それぞれの充実や成長を尊重すべき「高校の部活動」なのに、野球部には勝利至上主義が横行しており、野球の試合をする機会さえ与えない。それを美化するばかりで放置・容認する「高校野球ムラ」の思い込みは異常ではないか?

対照的に高校サッカー界は、20年近く前に新たな取り組みを始めた。「補欠ゼロ」をテーマに掲げ、トーナメント制の選手権とは別にリーグ戦を導入したのだ。全国を東西12チームずつに分けて行う「プレミアリーグ」を頂点に、その下には全国9つの地域で行われるプリンスリーグ1部、2部がある(県によっては1部だけ)。

更にその下に各都道府県リーグがあり、例えば新潟県の高校リーグなどは4部まである。部員の多い高校は、AチームのほかにB、C、Dと複数チームを組織し、別カテゴリーに所属して試合ができる。多くの部員がリーグ戦を戦えるから、怪我などない限り多くの生徒がプレーヤーとしてサッカーの試合に臨めるようになったのだ。

高校野球でも同じことはできないだろうか?
筆者は、実際に高校球界に提言したことがあるが、「球場がない」「予算がない」「審判が足りない」「日程に余裕がない」などと拒絶された。

ちなみに、リーグ戦を実現するなど自由な活動の機会を作るため、「春の地区大会を廃止し、各地区、各高校が自由に大会を提案できる時期にしよう」という提案が、実際に4年前の2018年に、新潟県高野連からなされていると知っていただろうか? 
ただそれも、全国の都道府県高野連のほぼすべてが反対を表明し見送られてしまった。