「平成の怪物」が壊した〝150キロの壁〟
春と夏の甲子園を通じて、はじめて「150キロ」を記録したのは1998年、「平成の怪物」と呼ばれた松坂大輔(元・西武など)だ。あれから20年以上が経ち、150キロ球児の数は少しずつ増えてきた。甲子園の舞台で「150キロの壁」を突破した速球王たちの活躍ぶりを振り返ろう。
【高校球児“甲子園”球速ランキング】
[155キロ]
2007夏 佐藤由規(仙台育英)対智弁学園
2013夏 安楽智大(済美)対三重
[154キロ]
2001夏 寺原隼人(日南学園)対玉野光南
2009夏 菊池雄星(花巻東)対東北
2009夏 今宮健太(明豊)対花巻東
2019夏 奥川恭伸(星稜)対立命館宇治、智弁和歌山
[153キロ]
2008春 平生拓也(宇治山田商)vs.安房
2011夏 北方悠誠(唐津商)vs.作新学院
2011夏 釜田佳直(金沢)vs.習志野
2012春夏 藤浪晋太郎(大阪桐蔭)vs.浦和学院、木更津総合、光星学院
2020夏※ 高橋宏斗(中京大中京)vs.智弁学園
※2020夏は選抜交流試合
■155キロを投げた〝みちのくのプリンスK〟 佐藤由規(仙台育英)
高校生が甲子園で投げた最速記録は155キロ。過去にたった二人しか存在しない。その最初の投手が2007年夏、仙台育成(宮城)のエースで、「みちのくのプリンスK」と呼ばれた佐藤由規(現・埼玉武蔵ヒートベアーズ。登録名は「由規」)だ。
由規がはじめて甲子園のマウンドを踏んだのは、2年生だった2006年、第88回夏の甲子園。実は大会前から、ちょっとした評判の投手だった。なぜなら、甲子園出場をかけた宮城大会決勝戦が死闘だったからだ。
ライバルである東北高校との対戦は、0対0の投手戦で延長へ。由規は延長14回までヒット1本しか許さない好投をみせると、延長15回には2アウト満塁の大ピンチにも耐え、引き分け再試合に。15回226球を投げぬいた由規は、翌日の決勝再試合でも完投。2日間24イニングをひとりで投げきり、ストレートの最速は147キロを計測していた。
甲子園大会でも、由規の剛速球はフル回転。1回戦から11個の三振を奪うと、つぎの2回戦では、試合には負けたものの13奪三振。球速は145キロを計測し、その名は一躍、全国区になった。