旅の相棒は驚異的な重さの、
半世紀以上前につくられた国産クラシックカメラ
ここで改めて、今回の旅の相棒を紹介しよう。
1965年製のクラシックカメラ、MAMIYA C33君である。
蛇腹式カメラのマミヤCシリーズは、2眼レフとしては世界で唯一、レンズ交換機能を備えたユニークなカメラで、僕は持っている80mm、105mm、135mmの3本のレンズもこの旅に持参している。
MAMIYA C33は恐ろしいほど重たいカメラだ。
何しろ本体は約2キロもあり、クラシックカメラ好きの間でも“アイロン”とか“漬物石”などと揶揄されるほど。首から下げているだけで、だんだん肩が凝ってくる。
当時のカメラとしては当たり前だが、絞りもシャッタースピードもマニュアルなので、露出計(僕はスマホアプリを使っている)を使って光量を計測し、カメラのあらゆる設定を決めてからシャッターを押さなければならず、たいへん面倒臭い。
しかも、昨今のフィルム代と現像代の高騰から、一回シャッターを切るたびに牛丼の並一杯分くらいの金額が吹っ飛ぶ。
そのうえ解像度は今のスマホのカメラに完敗、条件や設定が難しいので、失敗写真となる確率も高い。
つまり機動性に乏しいうえにコスパ最悪なので、普通ならとてもじゃないけど旅に持っていくべきカメラとは言えない。
でも、なんとも言えない味のある、いい写真が撮れるのだ。
MAMIYA C33の古いレンズを通してみた白川郷は、こんな感じだった。
白川郷が今回の車中泊の最大の目的地だったので、次の行き先は考えていなかった。
岐阜の北端まで来ているので、このままさらに北上して富山県に入り、能登半島を目指すのも面白そうだと思ったのだが、天気予報を見ると、これからまた天気が崩れるらしい。
能登半島の雄大な自然を見るのはまた別の機会、天気がいい時にした方がいいだろう。
雨が続くのだとしたら、やはりまた建物や街並みを見るのがいいのではないかと思った僕は、来た道を戻り、岐阜県中央部の郡上市を目指すことに決めた。
国道156号で南下の途中、「大白川温泉 しらみずの湯」で入湯。
透明サラサラのお湯で、さっぱりして気持ちよかった。
郡上市には日が暮れた頃に到着。
特に下調べすることなく、たまたま目に入った「食の家じぇいあん」という店で、奥美濃和牛カレーなるものを注文した。
奥美濃カレーというのは、郡上地域で古くから製造されている「郡上地味噌」を隠し味とするご当地カレーなのだとか。
運ばれてきたカレーは皿ごと熱しているようで、まだグツグツと煮立っている。
一口食べてみると……、これがまあ、美味いの美味くないのって!
こうして行き当たりばったりで最高の店を引き当てると、実に気分が高揚するものだ。
今夜の宿は、車中泊ファンの間でも人気が高い道の駅古今伝授の里やまと。
ここで、翌朝まで休憩しよう。
撮影・文/佐藤誠二朗