好きであり続けるのも才能

――30時間も練習を続けるのは辛かったとのことでしたが、RTAをやめようと思ったことはなかったのですか?

あります。それも、今年の5月までは実質引退状態でした。タイムが思うように伸びなくなり、ゲームに対するネガティブな思いも強くなって、1年半ほどマリオオデッセイを離れていたんです。

復帰のきっかけになったのは、RTA in Japan Summer 2022でした。

ワザの練習だけで4500時間。「スーパーマリオ」にドハマリして世界で2番目の記録達成_1
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ゲームの応募が5月で、それより前から細々とRTAをやってみてはいたのですが、モチベーションがどうしても取り戻せませんでした。そんな折、RTA in Japan Summer 2022に受かって、モチベーションも完全復活して、そのままの勢いで自己ベストも更新してしまったんです。

――ブランクが良い影響を与えた?

マリオオデッセイを封印していた間、スーパーマリオ64やスーパーマリオギャラクシーといったほかの3Dマリオ作品のRTAをやっていたので、RTAに対する自分の解像度があがっていたのかなと思います。

――RTAの息抜きにRTAを

他の分野で学んだ経験が活きました。

あと思うのは、作品に対するネガティブな思いが払拭されたのが大きかったなと。ブランク明けは初心に返って楽しくRTAができていたんです。

RTAは、楽しいという気持ちが一番の原動力になると思います。楽しければ練習も辛くないし、もっと上手くなろうという気持ちになる。その楽しさをどれだけ維持できるかも、私は才能の一つだと考えます。

何度挑戦しても結果が出ないのは苦しいことです。そのゲームを楽しめなくなるかもしれません。私もその一人でした。

現在、世界1位のプレイヤーは半年間、記録がでなくてもコンスタントにRTAに挑戦していたことが配信やSNSなどでわかっています。先ほど、57分切りは長いこと達成されなかったと申し上げましたが、その間もこのプレイヤーは記録を狙い続けていました。

ゲームが熱意やモチベーションがなければ、きっと挑戦は続けられません。途中で諦めてしまったら、良い記録が生まれることもありません。RTAでは、好きという気持ちに勝てるものはないんです。


取材・文/笠木渉太

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