オスカルは、お掃除のおばさんに変装
75歳になる私の人生にもいろいろなことがあった。今年は、池田理代子さんの劇画『ベルサイユのばら』連載開始から、ちょうど50年目にあたるという。
1975年、私は、宝塚版『ベルばら』花組公演で男装の麗人、オスカルを演じた。オスカル役は、今では私の芸歴に欠かせないものとなったが、私自身はその時、冷静で他の演目と同列にとらえていた。しかし、幕を開けると、初日から宝塚大劇場は3階席まで立ち見の超満員。熱狂は日々いや増し、日本全国で爆発的なブームになった。
いわゆる“出待ち”をされているファンの方々の大集団を“突破”するために、お巡りさんに両腕をつかまれて楽屋を出るのは日常茶飯事。お掃除のおばさんに変装し、ほっかむりして、片手にホウキ、片手にチリ取りを持って退散したこともある。あの時、相手役のアンドレを演じた榛名由梨さんは、確か、長靴を履いて、手にはバケツを持っていた。
ベルばらブーム冷めやらぬ78年、『風と共に去りぬ』のスカーレット役をもって、私は13年間の宝塚生活に別れを告げた。ありがたいことにこの公演も大盛況で、日比谷の東京宝塚劇場では、チケットを買い求める方々が皇居の辺りまで並んだと聞いた。