次々と襲う病魔に刃物を首にあてた
そんなふうに華やかに宝塚を去った私を、退団直後から次々と病魔が襲った。最初はC型肝炎、次に髄膜炎。そのうちに、指先が循環障害で真っ白になるレイノー症状が現れ、手首や指が腫れ、全身が関節痛で痛み、むくみ始めた。終(しま)いには、むくみで体重が20キロも増えてしまった。
結末は、瀕死の状態での緊急入院。2000年夏のことだった。集中治療室に運ばれた私(当時53歳)は、その後意識を失う。4日目に意識を取り戻したとカルテにはあるが、本人の記憶はズタズタだ。医師から緊迫の病状を伝えられた周囲の者は、本気で葬儀の相談をし始めたそうだ。病名は、全身性エリテマトーデス(以下SLE)。膠原(こうげん)病のなかでも、とりわけ難治性の病だった。幾度かの危篤を乗り越えた私の体重は、39.3キロになっていた。
SLEの治療は、副作用との闘いといわれる。私の場合、SLE治療のステロイド大量投与に加え、C型肝炎のインターフェロン療法を同時にせざるを得なかったため、骨粗しょう症、糖尿病、白内障などあまたの副作用に苦悶した。
なかでも、きつかったのが鬱状態だった。不眠の夜が続き、たまに眠れば、自分が幽鬼になって彷徨(さまよ)う悪夢を繰り返し見た。
次第に私は、「死ななくちゃ、死ぬしかない」という考えにとり憑かれた。刃物を首にあてて自殺未遂さえ試みた。自殺未遂は1度ですまなかったため、3度ほど心療内科に入院もしている。
50代、60代は、本当に生きることだけで精いっぱいだった。