A5ランク=おいしいお肉とは限らない? 

また、牛肉には日本独自の格付けシステムがあります。「A5ランクの肉」という言い方を聞いたことがある人もいるでしょう。テレビで、「A5ランクの黒毛和牛だから、おいしいんです!」なんてレポートされていることもありますよね。この「A5」が格付けです。アルファベットと数字にはそれぞれ意味があります。
アルファベットは「肉の歩留まり等級」を意味します。歩留まりとは、牛1頭からどれだけの肉がとれるかを表しています。牛肉の格付けでは肉の割合が多い順に「A・B・C」の3段階で表示します。
数字は「肉質」と言われるもので「1、2、3、4、5」の5段階で表します。
この数字は次の4 項目から決まります。

① 脂肪交雑
「霜降ふり」や「サシ」とも呼ばれる脂肪の度合い。数字が大きいほど脂肪が多いことを表す。
②肉の色沢
肉の色と光沢。鮮やかな赤色で、かつ光沢のいいものほど数字が大きくなる。
③肉の締まりおよびきめ
きめが細かく、肉が締まっているものほど等級が高く、数字が大きくなる。
④脂肪の色沢と質
脂肪は白ければ白いほど数値が高くなる。脂肪が白く、光沢と質もかなり良いものが最高級の5と判定される。

この4項目をひとつずつ5段階で評価して、いちばん低い数字がその肉の格付けとなります。たとえば、歩留まり等級がAで、肉質等級の4項目が「5、3、5、4」だったとしたら、その肉の格付けは「A3」になります。

どうでしょう? これで格付けの意味がなんとなくわかったと思います。みなさんは、格付けの意味を知ってどう思いましたか?
僕がこれの意味を理解したときに最初に思ったのは、「格付け=おいしさじゃないんだな」ということでした。特に肉の歩留まりを表すA・B・Cがそのいい例だと思います。

A・B・Cは、肉の卸売業者さんが市場で肉を買うときの判断材料としては必要な表記ですが、肉を食べる消費者にとってはほとんど関係のないものです。にもかかわらず、「A5」の言葉だけが世間でひとり歩きしているような気がします。みなさんのなかにも、A・B・Cを「おいしさの順番」だと思い込んでいる人はいませんか?
格付けだけを基準に牛肉を選んでいる人は、本当にもったいないです! なぜなら、自分好みの食材を味わって選ぶ楽しさを捨てているようなものだから。

味の好みは十人十色です。甘みのあってやわらかい霜降り肉が好きな人もいれば、赤身の味としっかりとした歯応えが好きな人もいます。
牛肉のおいしさに正解はありません。また、どの格付けの牛肉も畜産農家さんが手間暇をかけて一生懸命作っていることには変わりはありません。いろいろな格付けの牛肉を自分で食べ比べてみて、自分好みの味を見つけてほしいなと思います。

日本産だからといって全て和牛とは名乗れない? 和牛を取り巻く品種改良のヒミツ_2
写真はイメージです