「多様性があるから、今でも新しい発見がある」

――brasterさんの名前がついたRTAのテクニックがあると伺いました

「ブラ走法」ですね。自分で名付けたわけではないのですが、ありがたいことに広まってしまって。

――どのような技なのですか?

「ドラゴンクエスト8」のRTAで用いられるテクニックで、簡単に説明すると斜めに走ることで通常よりも速く走れるというものです。斜め走りをするためにはカメラを微調整する必要がありますが、1.4倍くらい移動速度が上がります。

もともとシンフォニアで使っていたテクニックなのですが、ふと、別作品にも応用できるのではないかと思ったんです。そこで、ドラゴンクエスト8のRTAで試したところ、実際に速かった。

大幅な時間短縮だったのもあって話題となり、気づいたら自分の名前がついていました。

――いろいろな作品に触れていたからこそ見つけられたというわけですね

もちろん、一つの作品を、それこそプログラミングのレベルまで研究する方もいるので、ブラ走法もいつかは発見されていたでしょう。ただ、さまざまな人がRTAを行っていることも、新発見が絶えない理由だと思います。

RTAでは「なぜこんな簡単なことに気がつかなかったのか」というケースが結構あるんです。ブラ走法も蓋を開けてみれば斜めに走るという単純なテクニックですが、別のゲームの考え方を取り入れることがきっかけで発見に至りました。

RTA業界は多様性の塊だと思っています。楽しく走りたい人や、人類の限界までタイムを詰めたいという人。RTA動画で再生数を伸ばしたいという人もいます。いろいろな視点に立つ人が集まるから、新しい着眼点も見つかる。

だからこそ、もっと多くの人にRTAを始めてみてほしいと思います。すでに取り組んでいる方々にも、新しく始める人の個性や気持ちを大事にしてあげてほしい。そうすれば、RTAはみんな楽しく、ずっと続いていけるはずです。とはいえ、シンフォニアのRTAが一番好きという気持ちは誰にも負けるつもりはありません。

取材・文/笠木渉太

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