アクシデントを面白いと思えるか
しかし、本当にそんなことが可能なのだろうか。撮影時間は72時間と限られていて、時間の延長も再撮も許されない。岡元Dは「通常の情報番組では事前に練った綿密な構成を元に、コンパクトな撮影に抑えるケースも少なくない」と明かす。
その対極にもある、決めすぎない構成・ぶっつけ本番・アクシデント歓迎、という異質さ。少し疑うように、事前の構成通りに動いたほうが安心しないかと尋ねてみる。
「この番組はそういう作り方じゃないので。もちろん大変ですけど、アクシデントを面白いと思えるかどうかじゃないですかね」
台風到来などの撮影期間の天気も怖くないかと質問すると、苦笑しながら答えた。
「たしかに天気は怖いですね。お店の取材だとお客さんが来なくなりますから……。ただ、悪天候に助けられることもあるんですよ。四苦八苦するスタッフの姿を取り入れられますし、それでも買いにくるお客さんがいれば店の新たな顔が見えてきます。その意味では、アクシデントが起きたらラッキー、みたいな打算的なところはあるかもしれません」
その発言を聞いたおよそ30分後だった。まさに7時の開店直前に、天気予報にもなかった大雨が突如降り出したのである。
「雨カバーどこにある?」
岡元Dの指示でカメラ、音声機器にカバーをつける。ほどなくしてお客さんが来店する。まだ開店前だというのに……。それでも岡元Dは何事もなかったかのように、買い物を終えた人に声をかける。
「まだ開店時間前ですけど……何を買われたんですか?」
岡元Dはすでにびしょ濡れだ。