MotoGP200戦目での快挙
その2022年の開幕戦、カタールGPでエスパルガロは予選で2列目5番グリッドを獲得し、決勝レースは4位。雨の第2戦インドネシアGPは10番手スタートの9位で終えた。
第3戦アルゼンチンGPは、エスパルガロにとってMotoGP、200戦目という節目のレースになった。その間、足かけ14年の紆余曲折はすでに述べてきたとおりで、華々しくチャンピオン争いを繰り広げるトップライダーたちと比較すれば、苦労の多い199戦を過ごしてきたといっていいだろう。だが、その苦労が少しずつ報われ始めていることもまた、昨年の結果と今年の開幕2戦が示している。
その200戦目の予選で、エスパルガロはトップタイムを記録。日曜のレースをポールポジションからスタートすることになった。ポールポジションの獲得は、スズキ時代の2015年以来7年ぶりだ。2番グリッドは、同じスペイン人でドゥカティ勢のホルヘ・マルティン。24歳のマルティンは最高峰クラス2シーズン目で、デビューイヤーの昨年に4回のポールポジションと1回の優勝を達成した逸材である。
日曜の決勝レースは、マルティンとエスパルガロの一騎打ちとなった。
序盤はマルティンがリードし、その背後にピタリとエスパルガロが張り付く。中盤になると、何度か順位を入れ替える攻防が続き、そして終盤、エスパルガロがついに前に出ると、残り2周で突き放しにかかった。その力強い走りには、数年前までよくあった突然の故障や失速の不安要素はかけらもない。
そのまま最後まで駆け抜けてトップでチェッカーフラッグを受けた32歳のエスパルガロは、マシンを停めてそこに跨がったまま突っ伏した。長く曲がりくねった200戦の果てに、ようやく摑み取った勝利。125ccクラス(当時)で世界グランプリにデビューした2004年最終戦のバレンシアGPから数えると284戦目。中小排気量時代にも表彰台の頂点に立ったことはなかった。足かけ19年に及ぶ長い世界選手権生活で、初めて経験する優勝である。その道程に思いをはせ、動けないでいる彼のもとへ、多くのライダーが走り寄って祝福した。