性教育を特別なものにしないために

――避妊や性感染症予防などの指導に関してはどうですか?

「学問としての話でいうと、生物として人間の体の仕組みを説明します。どのような行為を経て、受精し、妊娠するのかという部分ももちろん教えます(ライター注:日本では「はどめ規定」により、触れられないことも多い)。それ以外の心の話やジェンダーの話は、教師が適切なタイミングを判断して行います。

ただ、性教育をしていると『先生はどうなの?』と、教師のプライベートを聞こうとする生徒もいます。こういったことを避けるために、医師や看護師に授業をお願いすることも多いですね。
話しにくいから話さない、ではなく、話しにくいなら専門家に頼る、そして教師側も自身のプライベートをどれだけ共有したいか、したくないかも尊重されるという仕組みが整備されています」

――地域との連携もしっかりされているんですね。地域によっては性に関するサポートコミュニティがあり、街の催しなどでコンドームを配ることもあるというのを聞きました。

「そういう団体も地域ごとに活動しています。オーストラリアではスーパーなどで子どもたちがコンドームを購入して、風船みたいに膨らませたり水をいれたりして遊んでいるのを見かけます(笑)。日本よりもコンドームを身近なものと捉えていると思いますね」

――すごい! 日本では考えられない光景ですね。

「僕としては、最初から避妊具としてではなく、まずは身近なものとして触れてほしいなと思っています。膨らませてどこまで伸びるのか、どれだけ水を入れられるのか、といったことを、遊んで体感で知ってほしいですね。

もちろん、本来の使い方を教えることも必要ですし、そういう指導は学校でしっかりします。しかし、最初の出会いが『性行為の時に使う避妊具』としてではなく、もっと身近なものとしての方がいいなと思っています」

コンドームは子どもたちの遊び道具!? 驚くべきオーストラリアの性教育事情_1
PhotoMavenStock / Shutterstock.com
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