相川七瀬流“神話の歩き方”
「3児の母」と「大学3年生」
価値観が日々、変動する時代だが、こんな時だからこそずっと古い神々に想いを馳せてみるのも悪くない。國學院大學教授で神話学者の平藤喜久子が著した『神話の歩き方』(集英社)はそのための格好の手引き書となるだろう。
著者自身が旅して撮影した美しい写真をふんだんに載せ、神話の基礎知識から、舞台とされている地の味わい方まで、知っているようで知らない日本神話の楽しみ方を教えてくれる。
歌手の相川七瀬もこの本の愛読者の1人だ。なにしろ彼女は現在、3児の母であると同時に國學院大學神道文化学部の3年生。平藤教授の教え子なのだ。
しかも今年6月には令和3年度の成績優秀者として表彰を受けるなど、学内にその学才をとどろかせている真っ最中。当然、神道通であり、日本神話の通でもあるはずだ。
そんな関係性もあって『神話の歩き方』の刊行を記念して行われたトークイベントには、平藤教授のお相手に相川七瀬が招かれた。そして司会を俳優の賀集利樹(國學院大學神道文化学部の卒業生)が務めるという豪華な顔ぶれで、90分のライブ配信は、終始和気あいあいとしたムードのもと行われ、好評を博したのだった。
トークイベントの全容はアーカイブをご覧になっていただくとして、本記事では、アーティスト・相川七瀬の〝神話とのつき合い方〟を中心に、イベント後のインタビューも合わせてお届けしたい。
神話にハマったきっかけ
相川七瀬が神道に興味を持つようになったのは、歌手デビューして間もない頃だったと言う。
「色んなところにツアーで行くじゃないですか。移動日の空き時間とかに、その地の神社をお参りするうちに、だんだん神社っておもしろいなと思うようになりました。特に影響を受けたのは春日大社です。もう春日大社が今の私を導いてくれたというくらいに思っています。
私はそれまで『聖地は海外にあるもの』って考えていたんです。だから、日本に聖地があるなんて考えもしなかった。それが20代前半の頃、もうお亡くなりになられましたけど葉室頼昭(注:春日大社の宮司を務めていた)さんが書かれた『〈神道〉のこころ』という本を読んで『日本は実は聖地に溢れている島なんだ!』と感銘を受けました。神話をめぐる私の旅はこうして始まりました」