いざコースに行ったら、「これ、着られないの?」
ゴルフにはコースによってはドレスコードが存在する。ドクロモチーフや迷彩柄のウェアはNGのコースが多い。蛍光色も歓迎されない。短パンにはハイソックスが求められる(男子ツアーでは短パンNG)。女性は極端に短いスカートやショートパンツ、ノースリーブがNGになっていることも。もちろん男性のシャツはタックインで、袖まくりも注意される場合もある。実に厳しいのだ。
自らも名門・八王子カントリークラブのメンバーである、プロゴルファー・ゴルフ解説者のタケ小山氏にもゴルフのドレスコードに関して聞いてみよう。
「アメリカのジョン・デーリーが1995年の全英オープンを勝ちましたが、当時彼は『ラウドマウス』というブランドとウェア契約していたんですよ。ラウドマウスって、非常に個性的なブランドで、とにかく派手なんです。全英オープンのチャンピオンズディナーで、デーリーはラウドマウスのジャケット着てネクタイ締めて出席しました。これはR&A(※全英オープンを主催するイギリスのゴルフ機構の総本山)からクレームが出るかなと思われましたが、まあネクタイをしていればいいんじゃないのという話になったらしいです。
要するにドレスコードは、それぞれのゴルフクラブのローカルルールなので、どんなものでも構わないんです。ただ、ゴルフを始めたてのビギナーは、そういうルールがあることを知らないでウェアを買っちゃって、いざコースに行ってみたら、『あれ、これって着られないの?』というふうになってしまうのはかわいそうだと思うんですね」
タケ小山氏は、ゴルフ場にはドレスコードがあることを理解しておいてほしいという。
「今とても人気のある『パーリーゲイツ』なんかでも、これは絶対に超名門コースでは着られないだろうなというアイテムはあります。でも、パーリーゲイツを運営するTSIの社長も『そんな細かいことを言われるのが嫌だから、うちではこういうのを作ってるんだ』と言っている。
パーリーゲイツのコンセプトは、“もっと気軽にもっと楽しくゴルフをしよう”ですから。全ての名門コースに自分たちのウェアを認めてもらおうとは思っていないんだそうです。ドレスコードはクラブのローカルルールですから、ウェアの作り手側から変えてくれと要望できませんから」
しかし、「ドレスコードなし」のローカルルールを持つゴルフ場も現れている。タケ小山氏が続ける。
「例えば、『茅ヶ崎ゴルフリンクス』なんかは、TシャツOKなんですよ。シャツの裾出しももちろんOK。サーファーが海から上がってそのままゴルフができるんですよ。アメリカなんかには町営や市営の料金の安いコースなら、それこそサンダルを履いて回ってる人もいます。サンダルはさすがに足元悪いだろうって思いますけどね」
プレーするだけでなく、どんなウェアで“キメる”かもゴルフの楽しみ方の一つであることは間違いない。ユナイテッドアローズをはじめ多くのブランドが参入したことで、ユーザーの選択肢は格段に増えた。そういう中で大事なのは、やはりその日、自分が出かけるゴルフ場のルールを理解し、TPOをわきまえることだろう。それはまさにゴルフだけでなく、日常のファッションの心得そのものだ。
取材・文/志沢 篤