限界を感じると起きるサバイバル反応

「職場の人間関係が原因でメンタルが悪化した」「ある日突然ダウンして働けなくなった」などの経験を持つHSPには、ポリヴェーガル理論における自律神経の「サバイバル反応」(凍りつき)が起きている可能性があるという。

自律神経には、活発なときに優位になる「交感神経」と、リラックスや消化吸収の際に優位になる「副交感神経」があることで知られる。ポリヴェーガル理論では、副交感神経系はさらに「背側迷走神経」と「腹側迷走神経」という新たな神経系に分かれると提唱される。

「背側迷走神経は、死の脅威に面したときに生き残ろうとする神経。たとえばアフリカのサバンナで、ライオンに狙われた獲物が硬直してじっとしている映像を見たことがある人もいるかもしれません。これは、背側迷走神経が優位になったサバイバル反応の状態です。

動かなければ相手はそれ以上攻撃しなくなるので、スキを見て逃げたり、捕食されたりするとしても強い痛みを感じにくくなる。命の危険がある野生では、極限状態で自分を守るためにそういった反応が出ることがあります。

人間社会に置き換えると、たとえば職場で上司に理不尽に怒鳴られたときなどに何も言えずフリーズしたり涙が出たりしてしまう人がいますが、それはサバイバル反応。『冷静に説明・対処すればいいだけでは?』と思われるかもしれませんが、そうしたくてもできない自律神経状態なんです。

繊細すぎるHSPを悩ます、自律神経のサバイバル(凍りつき)反応とは?_3
自律神経のサバイバルモデル(画像/株式会社サステナミー提供)

緊張やストレスが大きい状況で日々働いていると交感神経が活発化しすぎて、フリーズで収めることしかできなくなってしまうことがあります。もちろん全員ではありませんが、HSPのほうが神経処理が平均より深い分、そうなってしまうリスクは高いかもしれません。

自律神経は共鳴を起こすので、常にイライラしている上司がいる、苦手な人と日々職場で関わらなければいけないなどの場合、場の雰囲気や人の感情・危険を察知しやすいHSPはしんどくなりやすい。

また、自分の本音を言えず、仕事や悩みをひとり抱え込んで限界を迎えてしまうなどもHSPの方にはありがちです。無理を重ねた結果、ある日いきなりベッドから起き上がれなくなった、会社に行けなくなってしまった、などの状態になってしまうこともあります。これは『本人のがんばりが足りないから』ではなく、自律神経の状態なんです」