『少年ジャンプ+』がアプリ開発コンテストを開催する理由

イベント終了後、細野編集長に今回のトークイベント『ジャンプのミライ2022』開催の狙いについて取材した。『ジャンプアプリ開発コンテスト』は今回が4回目となる。『少年ジャンプ+』では2020年に『マンガテック2020』も開催しているが、なぜこのようなコンテストを開催し続けているのだろうか。

「集英社は出版社ということもあり、ITやデジタル関連のサービスを立ち上げるには、外部の企業と協力することが欠かせません。協力していただくところをどこから見つけてくるのかと考えた時に、自分たちでゼロから声をかけていくだけではなく、『漫画賞』みたいな形で、コンテストとして募集したらどうだろうか、ということで開催してきました。

コロナ禍で情勢が変化していることもあり、今年改めて『アプリ開発コンテスト』を開催して募集を募ったら、どういった企業が参加してくれるのか、『マンガテック』や過去の『アプリ開発コンテスト』とはタイプが異なる企業が手を上げてくれるのではないかという期待もあって開催することにしました」

また、今回のようなトークイベントは、2017年に一度、クローズドで規模の小さいイベントとして行ったことがあるという。それをヒントに『ジャンプのミライ2022』開催に至ったそうだ。そして、そこにはブランディングの意図も込められていた。

「『少年ジャンプ+』として発表できることもたくさんあるし、『ジャンプのミライ2022』を通じて『少年ジャンプ+』は今何を考えているか、ということがみんなに伝わると、長い目で見ても良い効果が期待できるだろうと考えました。また以前はリアルで開催しましたが、今回はオンライン形式で3回開催しているのもポイントです。より多くの方に参加していただき、『アプリ開発コンテスト』のことを知ってもらいたいですね」

また少年ジャンプ+編集部には「編集者が全員新しいサービスを1つ立ち上げる」という目標もあるという。他の出版社にはなかなか無さそうな取り組みに思えるが、挑戦を尊ぶ集英社ならではの理由がある。

「これからの時代はマンガだけ作っていればいいというのではなく、技術のことも理解していかないといけないと感じています。そして、理解していくには自分で1個サービスを作ってみるのが一番早いなと。1回作ると、この技術で何ができるのか、技術系の会社との関わり方など、技術・企業のことも肌感で分かるようになると思うので、それにトライし続けたいです。

また『少年ジャンプ+』を立ち上げた時に、危機感から始めたところもありました。紙のメディアのみでは、デジタルが普及した時に危なくなるのではないか。今も同じような危機感はあって、10年くらいで環境というのはいろいろと変わっていくと思うので、そこに適応していくには新しいことをやり続けないといけない。『少年ジャンプ+』という新しいことにチャレンジした我々が率先して、新しいサービスをどんどん世に送り出していきたいという想いもあります」

『ジャンプアプリ開発コンテスト2022』へのエントリーは9月16日まで。応募締め切り後、9月から10月の1次審査、10月から11月の2次審査、12月の最終審査と進み、最終結果発表は2023年1月の予定だ。ファンコミュニティ、データ分析、海外ローカライズ、新しいマンガ表現など、ジャンプの進化につながるものなら、企画内容は問わない。

入賞者には賞金が贈られ、実際にアプリ開発を行うことになった場合、賞金とは別に開発資金も集英社より提供される。コンテストの詳細や募集要項等に関しては、『ジャンプアプリ開発コンテスト2022』公式サイト を参照してほしい。

既存のマンガのイメージを変えるような、革新的で挑戦的なアイディアを持った企業の挑戦をジャンプは待っている。


文・撮影/若林健矢

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