「ゾゾゾ」そして「Q」が生まれたきっかけ

––––まず、視聴者として「そもそも皆口さんが何者か?」という点が気になります。映像業界的にはまだ著名ではない一方で、発信される作品はことごとく「手練」のレベルを軽く超えている。それなりに実績があるプロが偽名で趣味的にやっているんじゃないかといった説もあるのですが…どうなんでしょう?(笑)

自分の本職は、WEBデザイン会社勤務のデザイナーです。なので、映像コンテンツ制作は仕事上、本来無縁な領域でした。映像の制作は、学生時代にハンディカムとかでお遊び的なムービーを作ったぐらい。ホラー系作品や心霊・都市伝説は大好きでしたが、そういう映像作品づくりを昔から目指していたわけではありません。

社会人になってから、とあるきっかけで「ゾゾゾ」を開始したのを機に、初めて本格的な映像編集ソフトを使って、撮った素材を編集しました。仕事柄、画像編集ソフトの扱いには慣れていたので、映像編集にもそれなりに早く馴染めた気はします。

自分の場合、常に自分の編集したものを客観的に観る習慣があって、もう一人の自分が少し引いたところから作業を眺めている感じです。完成して一旦動画をアップしたあと何度も見返しますね。電車の中とか家とか、どこでも。で、納得いかない点に気づいちゃうんです。それは歌でいうと「サビが多すぎる」みたいなことだったりするのですが、気づいたからには修正せずにはいられない。だから何度もアップし直したりしています。5~6回ぐらい消して、微修正して再アップしたり。

––––私もテレビのプロデューサーとして思い当たる節がありますが…その完璧主義加減はヤバいですね(笑)。「ゾゾゾ」では本業の機材を使い回したりするのではなく、完全に手弁当で自主的に活動を開始したのですか?

そうです。あ…でも落合さん(「ゾゾゾ」メインパーソナリティ・落合陽平氏)だけは本業の現場から調達しました(笑)。ただWEBデザインの仕事って、波があるというか、妙に「待ち時間」が発生することが多くて。そういうタイミングで内職っぽく『ゾゾゾ』を編集しています。時間の使い方を工夫することで何とか成立させていますが、のめり込みすぎて後戻りできなくなってしまい…。

カルト的人気を誇るホラー番組「フェイクドキュメンタリー『Q』」はいかにして生まれたのか?_3
皆口氏が発起人となって開始された人気YouTube番組「ゾゾゾ」。新作「夏の特別編 沖縄スペシャル」が2022年8月5日公開された

––––なるほど。一方で「Q」の制作をめぐる経緯は、「ゾゾゾ」とかなり違いそうですね。

そうなんです。「Q」は制作を開始するまでがちょっと特殊で。

まず寺内康太郎監督という、ホラー系作品で有名な映像監督とある作品で知り合ったんですが、話してみるとやはり凄い才人で。翻って現在の日本の映像系ホラーエンタメ業界を見たときに、寺内監督のような才能をちゃんと活用できてないように見える。そんな状況に対し、「もし寺内監督と本気で何か新しい作品を作ることができたら、絶対に日本中のホラーファンが喜ぶはず」と考えました。

そこに対して自分のノウハウが活かせるなら、とあれこれ動き出した結果、生まれたのが「Q」という作品なんです。そうして展開していくうち、寺内監督以外にもさまざまな才能を持つ方々が合流してくれました。本当に感謝しかありません。

カルト的人気を誇るホラー番組「フェイクドキュメンタリー『Q』」はいかにして生まれたのか?_4
「フェイクドキュメンタリー『Q』」の制作メンバーであり、「ゾゾゾ」「家賃の安い部屋」といった人気YouTube番組を手掛ける映像作家・皆口大地氏。本業はWEBデザイナーとして、「ゾゾゾ」のメインパーソナリティ・落合陽平氏が代表を務める会社に勤務している