学生とプロの間にある大きな壁
さて、そんな彼らが目指す大きな大会がある。それが毎年8月に行われる個人戦の「大学芸会」と、2月~3月に行われるサークルごとの団体戦「NOROSHI」の2大大会だ。
「『大学芸会』はコンビ単位でエントリーできて、特にお笑いサークルに所属している必要はありません。『NOROSHI』はチームごとにエントリーし、漫才、コント、ピンネタと3組に分かれてネタを披露して勝敗を競います。そのほかに、『大学生M-1グランプリ』や『学生R-1』といった大会もあってそれぞれ盛り上がっていますが、やはり『大学芸会』と『NOROSHI』は学生芸人にとっては特別な大会。この大会で勝ち進むことを目標にお笑いサークル部員はしのぎを削っているんです」(西野さん)
甲子園を目指す球児のようなストイックさでネタをブラッシュアップし、これらの大会へ照準を合わせる部員たち。そして、勝ち上がっていくことで他大学の学生とも交流するようになり、志を同じくする者同士で学外ライブなどを開くというのが一般的な流れ。この二大大会が大学お笑いムーブメントを盛り上がる原動力となっているわけだ。しかし、学生大会で好成績を残しても、プロの大会で通用するかというとそれは別の話。
「大学生の大会で自信をつけてM-1に出てもなかなか同じようにはウケなくて。そこでプロとの差を知りました」(西野さん)
ということで、多くはここでプロの芸人になることを諦め、他の学生同様、就職活動をすることになる。西野さんも前コンビ「30度バンク」で2015年の大学芸会で優勝しているが、M-1グランプリ2015では3回戦敗退。相方のよしおかさんは「晴天サンティ」という学生コンビでM-1グランプリ2016で準々決勝に進出し、ベストアマチュア賞を受賞。それぞれ学生としてはかなりの戦績だが、やはりそれでもプロとの圧倒的な差を痛感したようだ。
「私たち(シンクロニシティ)も社会人アマチュア芸人として準々決勝に進出したことがありますが、約120組が進出できる準々決勝と、25組しか残れない準決勝では別世界。お笑いだけで食べていけるかどうかのラインがここにあるイメージです」(西野さん)
しかし、その準決勝に大学卒業後、数年で進出したのが令和ロマン(2018年準決勝進出)、ラランド(2019年同進出)。同世代の西野さんも「これは我々の世代ではかなりありえないこと」と、その衝撃を語る。そして、学生時代から大学お笑い界で抜群の知名度を誇っていた真空ジェシカも昨年大会で決勝進出するなど、いまや、「学生お笑い出身者でもプロと勝負できる」という機運が高まっている。