「海外」と「完全栄養食品」が成長を後押し

それでは、なぜ日清食品は投資家から高い評価を受けているのだろうか。

同社の状況を深掘りしてみると、単純に国内の値上げだけを投資家が評価しているわけではなさそうだ。ここまで、国内のカップヌードルをはじめとした「即席麺の値上げ」事情をメインにお伝えしてきたが、実は日清食品の中長期成長戦略のカギとなるのは「海外事業」と「完全栄養食品」の2つだ。付加価値を付けて値上げしやすいマーケットを持っているのだ。

まず海外では、現在100を超える国・地域で展開し、2021年には「カップヌードル」ブランド商品の世界累計販売数が500億食を突破するなど、今や日本を代表するグローバルブランドに成長した。

値上げが
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昔と違い、現在は海外の方が人件費も含めてインフレ率が進んでいる。日用消費財が全体的に値上がりしているため、日清食品もそれに合わせて値上げをしやすい環境がある。

最も特徴的なのは、海外事業が今期17.2%の増益見通しであり、即席麺の市場浸透率が国内と比べてまだ低い海外市場において、認知度・需要が着実に向上させることで、業績アップの余地が残されていると投資家に評価されていると考えられる。

そして、新規事業の「完全栄養食品」については、同社が未病対策や健康寿命の延伸につながる大きなテーマとして取り組んでいる。例えば、5月に発売した「完全メシ」ブランドは、たんぱく質やビタミンなど33種類の栄養素をバランス良く摂取できるように設計されている。これらのブランドの販売は想定を上回って推移していて好調だ。味わいが変わらずに栄養が整うという点を消費者に理解してもらい、販売も伸びている。おいしい完全食を、定期宅配やコンビニ、スーパー、社員食堂など、さまざまなルートで展開していく新規事業は、今後第2の柱となりそうだ。

このように、日清食品は国内のカップヌードルの販売以外にも成長の活路を見出しており、それが投資家から高い評価を受けている。先ほどお伝えした通り、値上げは自社に対するイメージを悪化させかねない。しかし新たな市場の開拓を続け、看板商品に頼り切ることなく新たな商品を世に提供し続けることで、企業に対する評価が大きく変わることもあるのだ。

文/馬渕磨理子