町内でもビルマ汁を提供する飲食店が

ビルマ汁はごはんと一緒に食べるのもいいが、

「私はうどんがいちばん好きかな」

とフミさん。そこで、益子町でもビルマ汁を使ったうどんやそばを出している「手打ちそば うえの」さんにお邪魔した。益子にはビルマ汁を扱う飲食店が10軒以上あるのだ。

「夏限定で、ビルマ汁の温かいそばとうどん、それにつけ麺を出しています」

とは店主の上野一己さん(55)。とくに人気だという、つけ麺のそばをいただいてみると、さわやかな辛さのカレースープにそばがよく合う。

ルーツは太平洋戦争。栃木県益子町に伝わる郷土料理「ビルマ汁」がつなぐもの_4
ビルマ汁のつけそば1000円。具沢山でさっぱりしたカレーそばといった感じ

「ベースはフミさんのレシピですが、蕎麦屋ですから出汁は変えてあるんです。さば節やかつお節などをミックスして作っている和風出汁を使っています」

それに、少し辛めの味つけだ。醤油も加えてある。家庭料理をプロがアレンジして、実においしく仕上がっている。

「タッパーを持ってきた人もいるんですよ」

と、一己さんとともに店を切り盛りする妻の由里子さん(46)が教えてくれた。ビルマ汁を知らずに入ってきたお客が注文してその味に喜び、また次の週にやってきて「家族にも食べさせたいから」とタッパーでお持ち帰りしたのだという。

ルーツは太平洋戦争。栃木県益子町に伝わる郷土料理「ビルマ汁」がつなぐもの_5
「手打ちそば うえの」の店主、一己さんと由里子さん。ご自宅ではビルマ汁に素麺を合わせて食べているとか
すべての画像を見る

「手打ちそば うえの」さんは1966年創業の老舗で、けんちんそばの名店でもある。2代目の一己さんは、ビルマ汁自体は昔から知っていたのだそうだ。

「同じ益子町内でも、田町とは違ってうちの地区では食べないんですよ。でもお祭りの打ち上げで田町の人たちがビルマ汁を作ってきたことがあって。20年くらい前ですかね」

その味が印象的だったこと、町を挙げてビルマ汁を普及させようという動きが広がったこと、それにビルマ汁はきっとそばやうどんに合うと思ったこともあって、2014年から夏限定のメニューに加えた。いまではすっかり夏の風物詩で、

「今年はもうビルマ汁はじまりましたか、って問い合わせも多かったね」

と由里子さん。益子といえば焼き物の町だが、近所の益子焼の店の人たちも次々にやってきて、ビルマ汁で夏を楽しむ。