岐阜のカツ丼をひもとくヒントは「関ケ原」にあり!?
岐阜全域に目を向けると、他府県にはないカツ丼がほかにも数々ある。町中の食堂やうどん店でも、デミグラスソース、タレなど、駅ごと、店ごとに違うカツ丼が目につく。他の地域では類型化することが多いのに、なぜか多様なカツ丼が林立しながら混ざることなくひしめきあっている。
昨日今日、町おこしのために作ったB級グルメのような急ごしらえ感はない。それぞれに歴史があり、独特の風情を醸すカツ丼ばかり。さすが、天下分け目の関が原を擁する岐阜県だ。見事な群雄割拠ぶりである。
さて、カツ丼群雄割拠を体現する岐阜とはどんなところなのか。
地図をみると、東に長野、南に愛知、以降時計回りで7時の方向に三重、8時半から9時に滋賀、9時から10時の方向に福井、10時から11時半に石川県、12時あたりに富山という、甲信越、東海、近畿、北陸……という、それぞれ異なる文化圏に接する。それが岐阜県である。
「天下分け目の戦い」が関ケ原で行われたことからもわかるように、「東」と「西」の分水嶺となる重要な交通の要衝だ。東海道と並走する中山道が県南部を東西に走り、そこから福井へとつながる美濃街道、富山へとつながる白川街道、関ケ原から伊勢へとつながる伊勢街道など様々な文化と交流するルートがある。「東の豚肉、西の牛肉」など食べ物においても東西の分水嶺となることが多い地域だ。
岐阜は南北に長く、3000メートル級の山が連なる県北の飛騨圏と、海抜ゼロメートル地帯も含まれる濃尾平野にある県南とでは地形も大きく異なる。県全体の面積は全国7位だが、82%以上が山林で農地は少ない。広大な上、地勢がさまざまあるせいで、県内の各都市間の食文化の往来はあまり多くない。
そうした地理を頭に入れつつ、あらためて岐阜のカツ丼の類例を見てみたい。先に紹介したあんかけかつ丼は県南東部にあり、名古屋駅から中央本線快速で中津川・塩尻方面へ55分の瑞浪駅にある。