体験すれば「楽しくて仕方がなくなる」
日本の国土の約7割を占める森林。より有効活用するために、グリーンツーリズムも行いたいという。
古谷 私は山に入って、新素材を収穫しているときが一番楽しい。そして収穫したマツをサイダーに浸けて、「マツサイダー」を作ってみたりするのも面白い。それは私たちだけでなく、みんなが楽しいと感じると思うんですよ。森に入り、採集して、何かしらの形にする。そうしたことを皆が体験できるように山を正しく開いていきたい。
木本 実際、私たちが山で撮ったインスタの動画を見て、興味を持ってくれる人は多いんです。「私も山に連れてって」という友達が増えました。
古谷 確かに。実際、山に入ってみないとわからないものがあるよね。
木本 私もそうなんです。最初はどこか古谷の手伝いしている感覚だったんですけど、「一緒に沖縄に行こう」と言われて、山で琉球シナモンをちぎって食べたり、やんばるの農家さんを回ったりしたときに、初めて感動して、ちゃんと草木研究所の一員になれた気がします。
古谷 一度心を掴まれたら、もう楽しくて仕方がなくなる。だからツーリズムをやりたいんです。里山経済の活性化のためにも、「山に入って食べるのが楽しい」とか、「年1回でもいいから収穫に行きたい」という人を増やしたい。
目標を実現する一手になりそうのが、「見本山」と「相棒山」のプロジェクトだ。全国各地の有用植物が1箇所に集まる“生きた植物園”が「見本山」。活動に賛同して協力体制を築いてくれる山が、「相棒山」となる。
木本 今、すでに静岡や長野など9つの地域の山と連携を組んでいるんです。
古谷 例えばレストランから、「スギとモミの新芽を300gほしい」とオーダーが来たら、相棒山に連絡をして採取してもらう。そういうことが普通にできるようになると、海外からハーブを輸入しなくても、日本の山にあるもので、多様な味覚を楽しめると思います。さらに山に解放日を設ければ、いろんな人が山に入れるようになる。山と密接なコミュニケーションをしてほしいです。
木本 「B to B」の動きも加速させたいと思っています。例えば、デベロッパー系の企業なら、森を切り開いて商業施設やホテルを作ることがある。その間伐材で作ったドリンクやお酒を飲めて、「木を飲む」という体験ができたら、きっと付加価値になる。そんな貢献もしながら、ちゃんとビジネスとしても大きくしていきたいです。
古谷 私たちが食べることによって処理できる木の量は、本当に微々たるものでしかない。最終的な目標は、我々の活動を、人に真似してもらうこと。私たちの開拓に活路を見出して、いろんな方に広げていってもらえるとうれしいです。
取材・文/泊 貴洋
撮影/園田 ゆきみ
商品・イメージ写真提供/日本草木研究所