「木を食べることが当たり前になれば」
日本草木研究所の活動で目を引くのは、パッケージやウェブサイトなどの洗練されたデザインだ。フォレストジンのイメージビジュアル一つ取っても、強いこだわりが感じられる。
古谷 日本草木研究所と聞くと、地域で活動しているおじさんの団体なんじゃないかと思われる(笑)。ギャップを作って、新しい画期的な活動なんだと感じてもらうために、現代的かつ日本的要素も採り入れたデザインを目指しています。
木本 デザインやレイアウトは主に私がやりますが、古谷もクリエイティブには意見を言います。私も一緒に山に入って研究しますし、二人で分業しつつも連携し合っているのも新しい活動に見える要因になっているかなと思います。
またユニークなのは、新たな視点を与えてくれるところ。現代人は、ニンジン、ジャガイモ、タマネギといったスーパーに並ぶものを「食材」と思いがちだが、それ以外にも食べられるものが身近にあると、目を見開かせてくれる。
木本 世界で消費される食料のカロリーの90%が、30種類の食物だけで得られているという推定があります。「たった30種って、どういうこと!?」と思いますよね。同じものばかり食べるのは、つまらない。さまざまな木を食べることが当たり前になると、食生活がより豊かになって、楽しくなる気がします。
古谷 そもそもハーブやスパイスが食卓に並び始めたのは昭和の中頃からで、それはひとえに、食品会社が流通を整えてくれたおかげ。ただ、その前の大正時代まで、日本では薬草が普通に食べられていたらしいんです。だから自分としては、失われてしまった食文化を取り戻しつつ、かつ、新しいものを採り入れているという感覚。私たちも木や里山の植物を世の中に広げていくことはできるのでは、と思っています。
木本 価格については、日本の人件費や森のスパイスの希少性などを考えると海外産スパイスよりも高くなりますが、そうした嗜好性も含めて面白い、と思ってもらえればと考えています。
その価格設定の背景には、フェアトレードの考え方もある。
古谷 林業従事者にお話を伺うと、50年かけて育てた木が、1本3000円という安い価格で取引されていたりするんです。
木本 ウッドショックと呼ばれる状況はあれど、ピーク時の3分の1まで下がっている状態。
古谷 さらに間伐された木が売れずに放置されて、森の管理がしづらい状況にもなっている。そういった現状を知るにつけ、少しでも力になりたいと。
木本 今後は森林組合から間伐材を丸ごと買い取って、生活用品を作っていくことも考えています。