ところで、噴火は予知できるのだろうか。

2000年に起きた有珠山噴火では、3月27日に火山性地震が始まり、火山噴火予知連絡会が翌28日に「噴火の可能性」を発表し、地元の自治体や住民に自主避難を呼びかけた。噴火規模は大きかったが、犠牲者はゼロ。噴火予知の重要性を印象付けた。

一方、2014年に御嶽山で起きた噴火では、予知ができず、山頂付近にいた登山者ら63人が亡くなったり、行方不明になったりした。御嶽山は水蒸気爆発で、マグマが上昇した噴火ではなかった。マグマが動かない水蒸気爆発に関しては、予知が難しいことを示している。

江戸時代の宝永噴火は「死者ゼロ」

富士山のマグマだまりが何かのきっかけで揺さぶられ、実際に大噴火が起これば、大震災並みの社会的影響があると考えられる。しかし、鎌田名誉教授が指摘するように、噴火はプロセスを踏む。地下深くのマグマが上昇すれば、地震が起き、富士山の山体も膨張する。

富士山には地震計や傾斜計など多くの観測装置が配置され、宇宙からも監視しているため、私はある程度、予知できるのではないかと考えている。

こうしてマグマの動きが活発になれば、噴火警戒レベルも火口周辺規制のレベル2、入山規制のレベル3へと引き上げられるだろう。レベル4は高齢者避難、レベル5は(全員)避難だ。

私たちは自然災害に真正面から立ち向かう技術をまだ、持っていない。人命を守るには避難しかないのだが、仮に予知ができても避難がスムーズでなければ、意味がない。日頃から避難訓練をし、噴火警戒レベルが上がったら、それに従って避難することが重要だ。

宝永噴火はかなり大きな噴火だったが、直接の死者の記録はない。江戸時代の人はうまく避難したのだろう。科学が発達した現代の我々には更なる情報がある。この夏、山に登る人は特に、火山の情報に耳を傾け、いざという時の適切な避難をこころがけてほしい。

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