休刊は残念だがボクシング人気は落ちていない

――この度は、ボクシング・マガジンは残念ながら休刊となります。これはどのようなことが背景にあると思いますか?

まず専門誌という「メディア」と「競技」の関係性からいうと、両者の在り方はこの100年間ずっと変容を続けてきたんです。

もともとボクシングって会場の観客の前だけで行われていたスポーツで、テレビ放送もなかった。アメリカの例にすると、1920年代にラジオ放送が始まって、その後、テレビ放送とクローズド・サーキット(劇場などでスクリーン上映)があって多くの人がボクシングを観戦する機会が増えていった。

その結果、1980年代に(シュガー・レイ・)レナードや(マービン・)ハグラーなどのスター選手が生まれ、会場を通じて集まった視聴料が彼らの莫大なファイトマネーにつながっていった。で、その流れで80年代にはPPV(ペイ・パー・ビュー)が始まって、また新しくボクシングを観るスタイルが変わった。

――ボクシングとメディアは時代の変化にあわせて伴走してきたと。

そうです。メディアの変遷と一緒に、ボクシング市場や競技も成長していったと思うんですよ。具志堅用高さんや辰吉さんのテレビ中継で30%、40%を超える視聴率を叩き出していた時代と、DAZNやAmazonプライムのネット配信を通じてボクシングを視聴する今の観戦スタイルは違って当然。でも村田諒太選手や井上尚弥選手の試合は、サービスに加入してでも観たいと思う。

テレビで放送されなくなるのが、その競技の人気の低下を示すわけではないと思いますし、むしろ以前より誰もがスマホさえあって配信契約すればボクシングを観られるいい時代になったと思う。