自分の発信をきっかけに農業へ興味を持ってもらう

スーパーに並ぶ野菜を選ぶ際、価格や見た目を判断材料にする消費者は少なくない。しかし、その農産物がどのような環境で育てられ、どれほどの手間をかけて出荷されたのかまで知る機会は限られている。

「農産物の価値がわからないと、『どうしてこの野菜はこんなに高いんだろう? だったら、安いほうを買おう』と思ってしまいますよね。でも、それによってブランドや産地ごとの味や品質の違いを知る機会が失われてしまうのは、もったいないことだと思います」

農作物について熱い想いを持つ上西萌々(撮影/千駄木雄大)
農作物について熱い想いを持つ上西萌々(撮影/千駄木雄大)

上西が栽培するさつまいもも、品種や産地によって味わいや食感が異なる。「紅はるか」や「安納芋」といった名前は知っていても、それぞれがどのような特徴を持ち、どこで生産されているのかまで詳しく調べる人は、決して多くないだろう。

そこで上西が生かそうとしているのが、アイドル活動を通じて培ってきた発信力だ。農業に関心のない人にも、SNSを通じて栽培の様子やさつまいもの魅力を届ける。専門知識を持つ農家とは異なるタレントという立場だからこそ、消費者に近い目線で農業を紹介できるというわけだ。

「例えば、私がInstagramやTikTokでさつまいもを使ったダンス動画を投稿して、それがバズれば、さつまいもの魅力は広がるかもしれません。でも、それだけで終わらせたくないんです。

農家さんの中には、いいものを作っていても、うまく販売につなげられない方もいます。そこで、私の活動を通じて、ほかの農家さんにもSNSを活用することで新しい可能性が広がると伝えていきたいです」

農業において、品質の高い作物を育てることと、その価値を消費者に伝えることは、必ずしも同じ仕事ではない。上西が目指すのは、生産者と消費者の間に立ち、農業の魅力を広く伝える存在になることだ。

一方で、農業とタレント活動の両立には、現実的な難しさもある。農業は苗を植えればすぐに収益が得られる仕事ではない。天候や生育状況に左右されるうえ、収穫できても販路がなければ売り上げにはつながらない。

上西がさつまいもの栽培を始めたのは4月からで、まだ1期目。農業を事業として成立させるには、栽培技術の習得に加え、これから販売先の確保や継続的な収益づくりも必要になる。

「農業は収穫するまでは売り上げが立たないため、今は投資の期間です。本当はもっと畑に入りたいですし、最初から最後まで自分で育てたいという気持ちもあります。

でも、そうすると、タレント活動がおろそかになってしまうため、マネージャーさんから『それでは目指している方向に進めないよ』と言われることも(笑)」