「合格点の答案」という言葉に表れた中国側の要求
手がかりは会談後の公式発表に残っている。9月28日の王毅・岩屋会談について、中国外交部は、台湾問題をめぐる日本の指導者の言動を早急に正すべきだと王氏が述べたと発表した。
続けて、国貿促などに対し、日本が正しい選択をするよう働きかけてほしいと求めたという。相手は貿易団体である。その貿易団体に、日本側の政策対応を変えるよう働きかけることを期待している、と私は読む。
経営者たちを迎えた中国側は、その場を日本の政治への要求を伝える機会にした。経済団体が相手だったからこそ、これは軽く流せない。
発表文には、日本が「正しい選択」をし、「合格点の答案」を示すよう、国貿促などに後押しを期待するくだりまである。原文の「合格答卷」という言葉で、中国側が求めているのは、自国の要求に沿った対応なのだろう。
その物差しに合わせて日本を動かしてくれ、と日本の政治家や企業団体に期待しているように読める。商談相手として歓迎するだけなら、答案など求める理由がない。厚遇の意味は、この一語にほぼ尽きていると私は読んでいる。
岩屋氏に問いたいのは、中国側の要求にどう答えたかだ
中国側の発表によると、岩屋氏は、国貿促として両国関係を日中間の四つの政治文書の初心と原点に立ち戻らせるよう働きかける、と述べたという。中国が何を求め、岩屋氏がどう応じたかが、中国側の言葉で世界に流れている。
元外相であれば、伝えられ方まで点検すべきだろう。自分の考えと食い違うなら訂正を申し入れればいい。会談の席で何を話したかで政治家の仕事が終わるわけではない。
過去の合意を守ることと、現職首相の言動を中国の注文どおりに改めさせることは、別の問題である。前者を唱えていれば後者を求められたときの返答になる、というものでもない。日中友好を大切にするという言い方で、日本の政治にどう関わるつもりなのかという説明を済ませることはできない。
王氏に会うのがどれほど難しかったか、そこでどれほど丁寧に扱われたか––––岩屋氏が誇るべきなのはそこではない。
問われるべきなのは、日本側への政治的な働きかけをどう受け止め、何と答えたのかだ。企業の利益を守るための活動と、中国が望む日本の政策変更との境目を、どこに引いたのか。公表された中国側の発表だけでは見えない、この点を知りたい。
同じ方向の働きかけは岩屋氏だけに向けられたものでもない。中国外交部は9月15日の会見で、前日に劉彬外務次官補が日中友好議員連盟の若手議員団と会った際、高市首相の台湾をめぐる言動こそが日中関係に深刻な困難をもたらしている最大の問題だと伝えたと明かした。













