肉食するクマ

2016(平成28)年、5月21日から6月10日にかけて秋田県鹿角市十和田大湯の山林で7人の死傷者(内、死者4人、重軽傷者3人)を出した連続人身事故は大きな衝撃を持って受け止められた。なかでもツキノワグマによる食害は驚愕に値する、と報道もされた。

この事件に関しては各新聞社が詳細な記事を掲載し、また日本ツキノワグマ研究所の米田一彦さんが現地調査をされ、研究所のホームページに詳細な分析を掲載している(http://members.fch.ne.jp/fc3858459/kako2016_2017.html)。さらに日本クマネットワーク(JBN)の山崎晃司さんたちが現地調査をもとに『鹿角市におけるツキノワグマによる人身事故調査報告書』(日本クマネットワーク〔編〕2016)をまとめているので、事故の詳細についてはこれらに譲りたい。

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鹿角市大湯一帯は十和田湖の南西部で、能代市から日本海に注ぐ米代川の上流部に当たっている。

この一帯は、十和田八幡平国立公園の野生鳥獣保護区と民地が境を接している。被害現場となった地域は、まさにそのような場所で、牧畜用のデントコーンや牧草などの飼料を栽培する耕作地と森林が二極化している。

その耕作地と森林の境界地帯にネマガリダケの群生が点在している。ツキノワグマから見れば絶好の餌場と言ってもよい。なぜなら森と人為的耕作地が交互に配列された場所であり、森から直接耕作地に出入りでき、餌の確保に不自由しないからである。

すなわち、時期によっては人間とツキノワグマが偶発的に遭遇する確率が極めて高い地域だということになる。

これは私見の域を出ないけれども、クマ類による食害という問題は春期と秋期に際だって見られる。そして、人間がクマに捕食されるという問題は、春期から初夏の交尾期前後に顕著に起きているのではないか。

このような見方をするのは、30年あまり前にニホンカモシカやニホンジカ、ノウサギなどをツキノワグマが越冬穴から出た直後に捕食しているという事実や、後述することになるクマの子殺し行動という動きをつかんでいたからであり、その肉食傾向がこの交尾期と関わりながら人間におよぶ可能性があるのではないか、と考えていたからである。