自分のドラマや映画にフィードバックされている
――まずは『宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど』放送300回(7月)、おめでとうございます。毎週、いろいろな人の愚痴を聞き続けてきた人は他にいないと思います。生活史としても貴重です。
宮藤 ありがとうございます。あまり褒められると意識してしまいそうなので、考えないようにします。300回もやっている気がしないんですが、それだけの人が来てくれて、愚痴を言ってくれたってことですからね。職業も立場もかぶっていないので、毎回、ゲストを探してくるスタッフが凄い(笑)。
この番組、もともとはTBSラジオの『ACTION』(アクション)という番組でやっていたコーナーだったんです。『ACTION』は曜日替わりで5人のパーソナリティがいて、僕は月曜日の担当でした。各曜日、つまり毎日、ゲストを呼んで話すコーナーをやると聞いたとき、前にも別のラジオ番組を何本かやってきた経験から「これはたいへんだろうな」と思ったんです。
ただでさえ毎回ゲストを仕込むのはたいへんで、結局親しい人、役者仲間や後輩に偏ってしまう。僕以外にもパーソナリティは4人いるから、毎曜日「ゲストは誰だろう」という興味でリスナーの気を惹くのもしんどいだろう。僕自身、会いたい人はもう知り合いになっていたりするので、今さら会いたい人も思いつかない。
だったら一般の方と話したほうが面白いんじゃないかなと。知らない人の愚痴って、ふだんは聞く機会がないですよね。そこで愚痴を僕がただ聞くだけ、特に解決もせずに聞き流す、というスタイルに、放送2回目からなりました。やってみたら、予想以上に面白かった。
コンビニ店員の愚痴とか、ウーバー配達員の愚痴とか、その人ならではの話をしてくれて、知らないことばかりでした。『ACTION』は生放送だったから、一般の方をゲストとして呼んで本当に話せるのか、不安でしたが、愚痴は誰にもあるので、意外と盛り上がった。
今は録音してから編集する形になったので、ゲストの話を好きなだけ掘り下げることができます。Amazonオーディブルでは未編集のロングバージョンが流れるので、台本にないこともいろいろ聞けるのが面白いですね。
――仕入れた愚痴を創作に活かしたりは?
宮藤 実は自分のドラマや映画にフィードバックされていることが、すごく多いような気がしているんです。わからないようにやっているからバレてないだけで。
スタジオで1週間に1回、初対面の人と話すことで、自分の仕事の活性化にもなっているんじゃないでしょうか。
まず、単純に知らなかったことを知ることができるし、他にもたとえばドラマを作っていると、時々「この人の職業は何にしましょうか」と聞かれることがあって、「別にこの人の職業はどうでもいいですよ。だって居酒屋に集まっているだけの誰かだから」と思ったとしても、「どうでもいい」なんて言うのは演じる役者さんに失礼じゃないですか。
じゃあ何の仕事にしようかな――と考えながら「そういえばラジオでこういう話を聞いたから、この人の仕事はお医者さんにしよう」とか「ゴミ清掃員にしよう」とか思いつく。その職業について知らなくはないという強みがあるので、「番組をやっていてよかったな」って思いますね。













