いろんな人を探してくるスタッフが圧倒的に凄い

――一般の方はラジオで話すのは初めてですよね。会話に詰まることはないんですか?

宮藤 確かに皆さん、ラジオに出るのは初めてでしたが、しゃべれない人はいなかったですね。今、思い返しても、しゃべってくれなくて困ったことはなかったです。
ほとんどの回について、何を聞いたか、正直、今は思い出せないんですけど、どの回も面白かった。

300回やっていると、いろいろな人が来ます。たとえばプログラマーとか。自分とかけ離れていて、修行の気持ちで聞きましたが、聞いていると面白いポイントが出てくるんです。

オーディブルでは全編ロングバージョンとして流れるので、収録が30分で終わると、足りない気持ちになっちゃいます。逆に「やばい、これどうやって編集して30分にするんだろう」というくらい長くなってしまうこともあります。僕のせいで長くなることもあれば、呼んだ方が止まらなくなることもあるんですよね。そこが面白いのかな。

一般の方はラジオで話すのに慣れていないので、しゃべり出したら止まらないんですよね。ふだんからラジオに出ている人だと時計を見ながら、「30分番組だから1時間はしゃべらなくても大丈夫だろう」と調整できるから、そこまで長くはならない。

そういうときは意外と早く終わっちゃったなと思うこともあります。「舞台美術の愚痴」のときは、途中で、これは1回で収まらないだろうな、絶対に2回に分けないと無理だな、と思っていました。
 

――毎回2、3人呼んでいますよね。

宮藤 別の職場で働いてる同じ職業の人を2、3人呼ぶと、「同じことが私にもある」と盛り上がるんです。薬剤師の人を呼んだ回では「待たせるとお客さんが怒るよね」「そうそう」みたいな話が出てくると、スタジオにいる2人の共通項ではあるんですが、その仕事の輪郭がなんとなく見えるような気がします。

とにかく、いろんな人を探してくるスタッフが圧倒的に凄いです。

時々宣伝に関係した人に出演していただくこともありますけど、職業がかぶらないように探して300回ですから。

――宮藤さんの聞き出す話術も巧みなのでは。

宮藤 僕が下手だから、流暢にしゃべらなくていいとか、自分の意見をまとめて言わなくていいとか、「これなら話せる」とか、皆さんが思ってくださるのかも。たまに自分で自分の放送を聴いて聞き取れないこともありますし。

それよりも思っていることを素直に話してくれたほうが僕が喜ぶから、緊張しなくなるんじゃないかな。スタジオに入ってきたときは「どうしよう。何をしゃべろう」「緊張します」と言っていた人に、「あっという間でした」とか言われると、ホッとします。今のこの時間がストレスじゃなかったんだな、って。

この番組をやったおかげで、話を途切れさせないとか、相手の言ったことを否定しないとか、そういう聞き方ができるようになっているかもしれないですね。

(集英社クオータリー『kotoba』2026年秋号より一部抜粋し、修正しました。続きはkotoba本誌でご覧ください)

取材・文=矢内裕子 撮影=幸田 森 スタイリング=チヨ

kotoba 2026年秋号
コトバ編集室
kotoba 2026年秋号
2026/9/4
1,900円(税込)
166ページ
特集 ラジオがそばにいてくれる
顔は見えない。映像もない。文字として残るわけでもない。
それでもラジオの言葉は、ときに本や映像以上に深く心に届き、
誰かの背中を押し、私たちの日常に寄り添ってくれることがあります。

いま、「聴く」文化は大きな広がりを見せています。
radikoやポッドキャスト、オーディオブックの普及によって、
新たなリスナーを惹きつけています。
なぜ私たちは誰かの声に耳を傾けるのか。
音声コンテンツはこれからどのような可能性を切り開いていくのか。
本特集では、ラジオと言葉の力、ラジオと本や漫画との関係、
そして音声メディアの未来まで、多彩な書き手や語り手とともに考えます。

Part1 ラジオの力、言葉の力
朝井リョウ×加藤千恵 『信頼できない語り手』の裏側
大西泰斗 「声だけはちょっと自信があったんです」
荻上チキ×武田砂鉄 ニュースをどう伝えるか
宮藤官九郎 愚痴とラジオの意外な関係
田家秀樹×スージー鈴木 音楽を語るラジオ
大森淳郎 戦時下、ラジオ人たちの苦悩と順応

Part2 ラジオと生きる
高橋源一郎 ラジオの子
ハライチ 10年続いた深夜ラジオの「エネルギー」
ヤマノエイ ラジオの漫画が描きたくて漫画家になった
佐倉綾音 「論理」を突き詰め「集団ごっこ」を生きる
タブレット純 ラジオは「通信機」のように
村上謙三久 ラジオ小説はなぜ増えているのか

Part3 ラジオ、次の100年へ
小川 哲×TaiTan×大森時生 ポッドキャストは歌である
アルコ&ピース 文化人の「やばさ」を暴くポッドキャスト
橋本吉史 「一生続けられるコンテンツ」の作り方
ぐんぴぃ×水野太貴 落語家と塾講師――二人が目指す「しゃべりの理想形」
村上謙三久 ポッドキャストをはじめてみた
ラジオ番組のリアルイベントはなぜ増えているのか
出版社音声レーベルの現在地
岡部匡伸 ラジオの形態進化史――日本ラジオ博物館を訪ねて

※〈とじ込み付録〉『さむわんへるつ』ポストカード付き!

【対談】

森 遊机×今井悠也 日本の独自文化 映画パンフがアツい!

【第二四回 開高健ノンフィクション賞 受賞作発表】
上村幸平 『始祖の大地』

【短期集中連載】
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【連載】
大岡 玲 写真を読む
山下裕二 美を凝視する
山極壽一 ますます「サル化」する人間社会
石井光太 災害遺族をケアする 日本DMORTの挑戦
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【kotobaの森】
著者インタビュー 陣野俊史『バンリュー フランス団地映画の軌跡』
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吉川浩満 問う人
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※南陀楼綾繁さんの連載「愛と憎しみの積ん読」は今号休載します。
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