日本で暮らすことを選ぶ中国富裕層の共通点
張は取材が終わった後の雑談中、「こないだ旅行に行ったの」とスマホで撮影した写真を見せてくれた。満開の桜を背景に笑っている同年代の3人は全員が日本に移住してきた中国人だという。
同じような境遇の友人と頻繁に連絡をとり、旅行や食事でも日本生活を満喫しているようだった。
母国である中国ではなく、日本で暮らすことを選ぶ中国人の背景は多様だ。アニメや漫画をはじめとした日本のサブカルチャーに魅せられた人がいたかと思えば、新たなチャンスをつかむために裸一貫で異国の地に飛び込んだ人もおり、強権的な政治体制からの退避や資産の移管を目的とする人もいる。
資産規模も思想も異なる彼らに一つだけ共通していることがあるとすれば、それは教育熱の高さだ。
科挙に代表される「学問こそが出世の道である」という価値観に加え、一人っ子政策の影響で1人の子供に資金や期待が集中する環境、そして名門大学の卒業が社会的成功に直結するという根強い学歴信仰により、中国人の教育熱は日本の比ではない。
中国系の移民2世として米国で育ったイェール大教授のエイミー・チュアが2011年に出版した『タイガー・マザー』は、毎日数時間の勉強の付き添いにはじまりテレビやゲームを制限する生活習慣、名門大学への進学をゴールとする中国式の苛烈な教育が虐待にあたるのではないかと全米で議論を巻き起こしたほどだ。
教育熱心な「タイガーマザー」が文京区に集結
彼らの教育に対するその熱量は、日本で暮らすようになっても変わることはない。日本における主戦場の1つが、東京都文京区だ。
東京大学やお茶の水女子大学、筑波大学附属小学校をはじめとした教育施設が集積する文京区は日本を代表する文教地区であり、歴史的に教育熱心な親が集まることで知られる。その公立小学校に、タイガー・マザーが続々と集結しているのだ。
「私が通っていた30年前に中国人の同級生はほとんどいなかったが、ここ最近で一気に増えた」
文京区の保苅吉紀区議は自身の母校であり、26 年3月までPTA会長を務めていた誠之小学校の現状についてこう語る。東京大学のお膝元に立地し、150年の歴史を持つ誠之小学校は千代田区の番町小学校や麴町小学校と並び「御三家」と呼ばれる、東京の名門公立小学校として知られる。













