中国人富裕層が日本で「第二の人生」

JR御徒町から徒歩4分。宝飾問屋が軒を連ねる一角に、その雑居ビルはたたずんでいた。

「YAK御徒町ビル」と書かれた建物の窓ガラスには「おすすめ物件」としてマンションの情報が貼り付けられており、壁面に描かれた「華人貸款不動産会社」という文字を除けば、一見、全国どこにでもある地場の不動産仲介業者にみえる。

このYAK(東京・台東)が日本の不動産のインバウンド投資の最前線であることを知る人は多くはない。

ビルのエレベーターを上った先には、1階にある店舗とは別に応接フロアが用意されている。

神棚が飾られ、戦国武将が身につけていたような鎧が飾られた空間では、ソファに座る中国人女性がYAKの越水亮社長に対し、「千代田区や文京区、港区で良い物件はないか」と中国語で話しかけていた。

張欣然(仮名、52歳)は北京で医療サービス会社を経営していたが、仕事や子育てが一段落したため、「第二の人生」を歩もうと決意。2023年10月に日本に移住したという。「政治が安定し、秩序だっていてサービス水準も高い」と語り、現在は都内で不動産投資家として活動している。

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「北京に比べると全然安い」

日本での1件目の物件としてJR錦糸町駅(東京・墨田)に近い区分マンションを購入した張が次に狙うのは、都心の物件だ。「資産価値が下がらず、空室率が低いエリアの物件を探してほしい」と注文をつける。

条件をすべて満たす物件は2億円はくだらないが、「北京に比べると全然安いし、日本の不動産はお得よ」と笑う。そもそも中国では土地の私有が認められておらず、土地使用権にも期限がある。その点、売買や所有、相続が可能な日本の不動産は安全資産として魅力的だという。

世界中に華僑ネットワークを張り巡らせる中国人だが、日本のように母国との距離が近く、文化的にも似ており、強固な中国人コミュニティーがある国は少ない。