取る約束は守り、減らす約束は捨てた——2011年の政府文書
では、消費税を上げるとき、政治家は何を約束していたのか。その答えは、2011年6月30日に政府・与党社会保障改革検討本部が決定した「社会保障・税一体改革成案」にある。
この成案は、消費税を段階的に10%へ引き上げることと引き換えに、社会保障の側にも改革のメスを入れると約束していた。
年金の項目には、支給開始年齢について「68〜70歳へのさらなる引上げを視野に検討」し、「2012年以降速やかに法案提出」する、と明記されている。
負担を増やす増税と、給付を抑える改革は、同じ一枚の文書の中にセットとして書き込まれていたのだ。
その後、どうなったか。消費税を8%そして10%へ引き上げる法律は、2012年8月に成立した。取る方の約束は着実に実行された。一方、年金の支給開始年齢引き上げは、法案が提出されることすらなかった。
「速やかに法案提出」と書かれた改革は、その年のうちに「中長期的な課題」へと格下げされ、棚ざらしにされたまま、ついに日の目を見ていない。
奪う手だけは素早く、削る手はいつまでも動かない。この露骨な非対称こそが、次世代に回されたツケの正体である。
消費税は「次世代」にこそ重い
消費税を擁護する側は、しばしば「消費税は高齢者にも広く負担を求められる公平な税だ」と言う。世代間の公平のためにこそ必要だ、という理屈である。だが、実際の負担の分布を見ると、この主張は揺らぐ。
総務省の「家計調査」を見れば、それは一目でわかる。二人以上の世帯の消費支出は、世帯主が40〜50代の現役期にピークを迎え、60代、70代と年齢が上がるにつれて下がっていく。
子育て、住宅、教育——人生でいちばんカネの出ていく時期を背負っているのは、紛れもなく現役世代だ。消費に比例してかかる消費税は、支出の多いその現役世代にこそ、最も重くのしかかる。
消費税は決して「現役に優しい税」ではない。むしろ、次世代を担う世代の家計を、真正面から削り取る税なのである。
「次世代を守る」と言いながら、その次世代がいちばん重く負担している税は頑として下げない。話が、まるで逆さまだ。
減税が次世代へのツケになるのではない。働き、消費し、子を育てる現役世代から、いちばん確実に吸い上げる——その仕組みを温存し続けることこそが、次世代へのいちばん重いツケなのである。













